内密出産の実母語る「最後まで諦めないで」 孤立した女性へ伝えたいこと(2024年3月21日『KAB熊本朝日放送』)

KABでは「内密出産」をした女性から話を聞くことができました。内密出産は、妊娠を周囲に明かせない女性が病院以外には身元を明かさず出産する仕組みで、乳児の遺棄や殺害を防ぐ目的で熊本市の慈恵病院が国内で唯一導入しています。この女性は一時はお腹の赤ちゃんを殺そうとまで思いつめていたと言います。カメラの前で訴えた事とは…

「小学校のころから父親からのDVや暴言を受けていてその恐怖もあり家族に対して妊娠を打ち明けることができなかった」

西日本に住む、美咲さん。性被害に遭い、妊娠しました。子どもの父親は分かりません。

(Q妊娠を家族に打ち明けたとしたら?)
「殺されるだろうなって確実に」

妊娠に気が付いたのは生理の予定日を1週間ほど過ぎたころ。病院を受診し、中絶をしたいと医師に相談しましたが、子どもの父親のサインとお金が必要だと言われ、諦めました。警察などに相談することもできませんでした。

地元の妊娠相談窓口にも助けを求めたと言います。

「『辛いね』だったり、『まずは親御さんに連絡してみて』って。できないから相談してるのに。もう相談しても意味ないなって。本当に言葉に表すことができないんですけど、その時の気持ちってもう死ぬしかないんだろうなって」

追い込まれた美咲さん(仮名)は、自らの命を絶つ事や、お腹の赤ちゃんを殺して遺棄する事を考えるようになりました。

「赤ちゃんが死ぬためにODをしたり過度な飲酒喫煙をしたり、ちょっとお腹が出てきた時にお腹を自分で殴ったり。すごい“アドレナリン”が出てくるんですよね私なら殺せるし、私なら何も苦しくないし。一番仲が良い友達にどうすればいい?って私は捕まる覚悟でいるから遺棄する覚悟だからって言ったら、まだ内密出産、こうのとりのゆりかごっていうのが熊本にあるんだよって言われて」

藁にもすがる思いで慈恵病院を訪ねました。病院で保護されると次第に心境に変化が表れたといいます。

「お腹に話しかけたりすると偶然かもしれないんですけど、お腹を蹴ってくれたりだとか、そういうのがすごい嬉しくなって。自分も赤ちゃんも守れるって思ったんですよね」

しばらく病院に滞在し、その後内密出産をしました。

「赤ちゃんの声を聞いたらやっぱり、『ごめんね』しか言えなくって。初めて抱いた時もやっぱり一言目は『ごめんね』。本当はもっと『大好きだよ』とか言ってあげたかったんですけど、『産んでしまってごめんね』だったり、『今まで辛い思いさせてごめんね』っていう気持ちにしかならなくって」

出産直後に病院職員に撮影してもらった写真です。

「けっこう辛くなるんですけどね。見たら、だけどなんか強みになるというか」

難しい決断でしたが赤ちゃんの幸せを願い、特別養子縁組に託すことに決めました。この赤ちゃんは、熊本市児童相談所が一時保護し、その後、特別養子縁組を前提に里親のもとへ託されました。美咲さん(仮名)は現在は地元に戻り、もとの生活を送っていますが、ある事に心を痛めているといいます。

「乳児の遺棄事件とかがニュースに出てきたらすごく目に留まります。最近多すぎて、本当に言葉を失います」

国内で絶えず伝えられる乳児の遺棄や殺害に関するニュース。孤立し追い詰められ事件を起こしてしまった女性達にかつての自分を重ねています。

「助けてあげられなかったことがすごく悔しくなる。私もたぶん同じ思いをしたから。毎日毎日どうやって殺そうとか。透明だったらばれるから黒色のビニール袋も買っていましたし、30リットルの大きいやつ。妊娠検査薬を見た時にどうしようっておろすにもおろせない、親にも言えないってなった時に人生のどん底に落ちる。まだばれていない、まだばれていないでどんどん月日が経って遺棄してしまう。誰にも言えないままずっと1人で抱え込んで」

自身は慈恵病院から様々な選択肢について説明を受け、最終的に内密出産を選びました。誰にも相談できない気持ちが痛いほど分かるからこそ、勇気をもって相談してほしいと力を込めます。

「本当に生きているだけでいいことだと思うし、2人で死ななくて良かったなってすごく思いますね今でもずっと。本当に周りの人に言えなくても電話だけでもいいから、1回慈恵病院に電話してみてと思う。絶対に助けてくれるし、もう悩まなくていいんだよって言いたい。絶対に最後の最後まであきらめないでって思います」