悩む人に寄り添う 性感染症相談サイト「tell me」運営 「ヘルスコネクト」(渋谷区)<挑む>(2024年3月17日『東京新聞』)

 
 性感染症が増加する中、専用の相談サイト「tell me(テルミー)」を運営する「ヘルスコネクト」(渋谷区)。看護師の藤沢美香社長(33)が、患者と医療者の経験を生かし2021年創業した。
 
「研修を通じて健康意識の向上や子どもの性教育につなげてもらえたら」と話す藤沢美香社長

「研修を通じて健康意識の向上や子どもの性教育につなげてもらえたら」と話す藤沢美香社長

◆匿名で体験や悩みを共有

 きっかけはコロナ禍で都内の大学病院で勤務中、性器ヘルペスを発症したことだ。交際相手にうつしたかもしれない。将来、妊娠や出産ができるのか。婦人科で処方された薬でも改善せず不安が押し寄せたが、勤務先の医師に相談すると親身に助言してくれ寛解した。
 こうした経験を交流サイト(SNS)で発信すると、女性だけでなく男性からも次々と相談が寄せられた。「性感染症の情報は圧倒的に少ない。気軽に相談でき、医療知識に基づいた情報提供ができる場をつくりたい」と翌年、退職した。
 開設した相談サイトでは、匿名で体験や悩みを共有、医師や看護師にオンライン相談できる。母校の順天堂大教授の協力を得て性感染症の検査キットを販売し、陽性の場合は医療機関につなげる仕組みを整えた。

◆「1人でも多く救いたい」

 実態調査を基にした啓発活動にも力を注ぐ。歌舞伎町の風俗店で聞き取り調査を続け、副業として働く女性会社員の多さに驚いた。「風俗やマッチングアプリ利用者だけの問題と思われがちだが、一般の間にも感染が広がっている」と仮説を立て、企業などで感染予防などの研修に取り組む。
 性感染症の多くは無症状だが、男女とも早期に適切な治療を受けなければ不妊症の原因につながる可能性があるという。「性感染症には偏見もある。悩む人に寄り添い、的確な医療情報を提供し一人でも多く救いたい」と力を込める。(市川千晴)