性被害やドメスティックバイオレンス(DV)、生活困窮をはじめ、日本社会には女性であるが故に直面しやすい問題がいくつもある。
こうした状況にある女性を福祉の観点から包括的に支える困難女性支援法が、4月に施行される。
きょうは国連の「国際女性デー」だ。世界で女性の権利やジェンダー平等を求める声が高まっている。日本も新法を生かし、女性が自身の意思を尊重され安心して暮らせる社会に変えていきたい。
今日まで公的女性支援の根拠法は1957年施行の売春防止法だった。売春する恐れのある女性を保護し、更生させることを目的としていた。
新法はあまりに時代遅れの制度を改め、現状に合った支援に向かう転換点となる。人権を根本に据え、国と自治体による相談や保護、自立支援の体制を強化する。
現在は都道府県の婦人相談所が中心となり、婦人相談員が支援を求める女性に対応している。必要に応じて一時保護し、婦人保護施設などへの入所を促す。
今後はそれぞれの名称を女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設に変える。鍵になるのは自治体と民間団体、医療や福祉機関との連携だ。当事者に伴走するように切れ目なく支えてもらいたい。
相談に訪れる人は年7万人を超える。DVなど暴力の被害者が半数以上で、相談内容は医療や経済問題など多岐にわたる。病気や障害のある人も多く、いくつもの問題が絡み合っている。
相談員には高い専門性が求められるが、全国約1600人のうち8割は非常勤だ。4割近くは経験が3年未満で、十分な体制とは言えない。
相談員の人数と待遇を改善し、研修で専門性を高める必要がある。心身に傷を負った女性と継続的な信頼関係を築く過程で、相談員の精神的負担は大きい。心のケアも大切な課題だ。
婦人相談所への来所相談は減少している。多様化、複雑化する若年者の問題に対応できていない。
虐待などで家庭に居場所がなく家出したり、自殺未遂をしたりする人がいる。女子高校生の接客を売りにした「JKビジネス」や、アダルトビデオへの出演強要で被害に遭う事例も少なくない。予期せぬ妊娠を誰にも相談できず、乳児の遺棄に至る痛ましい事件も起きている。
こうした若年者を公的支援に結び付けるには、経験と人材を備えた民間団体の協力が欠かせない。相談を待つだけでなく、繁華街の巡回や交流サイト(SNS)の活用が接点を増やすのに有効だろう。
困難を抱えているのに自身の境遇に気付かなかったり、あえて目を背けたりする人もいる。それを自己責任と見なす風潮は状況を一層困難にする。多くの人が理解を深める啓発と教育も推進したい。