【前代未聞】水俣病の被害者団体の発言を環境省側がマイクの電源切り制止「真摯に向き合う姿勢あるのか?」(2024年5月4日)

前代未聞の対応に被害者団体側が抗議

司法手続きとは別の救済策求める声明

テレビ熊本

 

水俣病熊本地裁判決に関する理事長声明
本年3月22日、熊本地方裁判所は、ノーモア・ミナマタ第2次訴訟のうち、第1陣及び第2陣の原告144名について、25名を水俣病と認めつつも、民法除斥期間を経過しているとして、原告全員の請求を棄却する判決を言い渡した(以下「熊本地裁判決」という。)。
今回の熊本地裁判決は、昨年9月27日に原告全員を水俣病と認めた大阪地方裁判所の判決(以下「大阪地裁判決」という。)とは大きく異なり、被害者全員を切り捨てた判決である。熊本地裁判決は、大阪地裁判決のように医学的な知見だけでなく、疫学調査の結果等を十分に考慮して曝露と症候の因果関係を判断すべきであるという疫学を重視した判断とは言い難く、このことが大半の原告らについて水俣病であることを否定し、原告らの主張を排斥した大きな理由となっている。
また、今回の熊本地裁判決は、曝露停止から10年を経過した場合には水俣病とは認めなかったことや、国の主張に沿って、水俣病の判断の資料として審査会資料を重視し、原告ら水俣病の患者を長年にわたって診てきた民間の医師らが作成した共通診断書の信用性について疑問視していること、除斥期間の起算点について発症時としていることなど、厳しく水俣病の判断を行っていることに特徴がある。
大阪地裁判決は「水俣病特措法の対象地域外でも、不知火海で取れた魚介類を継続的に多食したと認められる場合には、水俣病を発症しうる程度の水銀摂取を推認するのが合理的である」とし、1968年(昭和43年)に有機水銀を含む工場排水が停止した後でも、魚介類を多食した人は水銀の曝露を受けたものとして、2010年(平成22年)から2年3ヶ月受け付けた水俣病特措法の救済策で、地域や出生年の線引きで対象外となったり、申請が間に合わなかったりした人についても水俣病と認めた。この大阪地裁判決と対比すれば、今回の熊本地裁判決は、水俣病被害者の被害を直視することなくなされた判決である。
さらに、本年4月18日には、新潟地方裁判所でも判決があり、未認定患者26名につき水俣病であると認めて、除斥期間の主張を排斥し、原因企業に対する損害賠償請求を認めた。熊本地裁判決は、一部の原告について水俣病であることを認めながらも、除斥期間を理由に原告のすべてを切り捨てた判決であり、水俣病の全面解決の観点からは大きく後退した判決であるといわざるを得ない。
現在も高齢化した多数の原告が全国において裁判で争っているという現状からすれば、水俣病被害者の早期救済は緊急の課題である。九州弁護士会連合会では、2007年(平成19年)、2008年(平成20年)、2010年(平成22年)、2013年(平成25年)と水俣病に関する大会決議で被害の実態に即した水俣病の解決のため恒久的な救済システムを構築するように提言してきた。また、被害の全体像を把握するためには不知火海沿岸全域の住民に対する健康調査の実施を求めてきた。
九州弁護士会連合会は、今回の熊本地裁判決の問題点を直視したうえで、今後とも水俣病被害者の被害に即した解決のために全力を尽くす所存である。
2024年(令和6年)5月1日
九州弁護士会連合会
理事長 稲津 高大

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