大阪大が「共生」をテーマに実施した大学院生対象の教育プログラムで、男性教員らが複数の女子学生にセクハラ行為などを繰り返していたことが19日、阪大への取材で分かった。
関与したとされる助教4人はすでに退職。処分には至らなかったが、阪大は1月、教育プログラムのホームページに「多くのハラスメント事象が起き、対応しきれなかったことを深く謝罪いたします」とのコメントを掲載した。
ハラスメントが起きたのは、阪大大学院人間科学研究科を中心に運営する「未来共生イノベーター博士課程プログラム」。専攻分野での学位取得と並行し、多文化共生をテーマに東日本大震災の被災地でのフィールドワークや海外インターンに参加する内容で、平成24年度に文部科学省の「博士課程教育リーディングプログラム」に採択された。 大学側は昨年1月、プログラムを履修した女性から相談窓口に連絡があり、調査を実施。元履修生の女性ら8人に聞き取ったところ、複数の教員によるハラスメント行為が横行していた疑いが浮上した。
調査の結果、平成28~30年を中心に、女子学生を会食に誘う▽特定の学生の写真を執拗(しつよう)に撮る▽拒みにくい立場を考慮せずLINEを尋ねる-といったセクハラを含むハラスメント行為があったことが判明。加害側として男性助教4人の名前が挙がり、少なくとも女子学生4人が被害に遭ったとみられる。助教4人は調査開始前に任期切れで退任したが、4人のうち3人からは調査後に謝罪文が提出されたという。
阪大の担当者は「懲戒の対象となる行為はなかったと認識している」と釈明。プログラムの責任者を務める人間科学研究科の渥美公秀教授は「事態を深く受け止め、今後も繰り返し振り返ることで組織内で意識共有を図る」などとしている。
■「男性優位」あったと判断、改善へ
大阪大の「未来共生イノベーター博士課程プログラム」で発覚した複数教員による女子学生へのハラスメント問題で、大学は相談者の要望に基づき徹底した調査は見送り、被害の全容把握には至らなかった。
一方、被害状況の聞き取りなどを通じ、問題の背景に「男性優位」の大学組織があったと判断し、組織風土の改善を進めるとした。
大学側によると、調査の過程では、元学生が「被害を訴えても結局、もみ消されるだけだという印象を持っていた」と、教員との間で力関係に大きな差があったと主張。また、「教育プログラムがうたう(「共生」の)理念と内実の落差に失望した」との声も聞かれたという。
聞き取りでは、少なくとも女性4人が被害者として挙がったが、大学側は「最初に相談した女性が処罰を希望していない」ことを理由に、4人全員に接触するなど徹底した確認作業はしなかった。ただ、プログラムの担当教員らは調査結果をもとに一連の問題を再検証。1月下旬に謝罪コメントとともに改善策もホームページで公開した。
改善策では、大学組織特有の階層構造によって生じる差別や抑圧に「あまり注意が払われなかった」と指摘。「モノが言えない雰囲気があったり、まともに受け止めてくれる人がいなかったりした」などとし、大学の組織風土に問題があったとの見方を示した。
その上で、大学の組織運営が男性教授だけで固められ、「実質的に男性優位社会」になっているとも言及。プログラムの運営側は「自身の権力や影響に常に自覚的であるべき」だなどとして、ハラスメント窓口の体制を見直すなどの案を示した。