「早稲田大学ハラスメント訴訟」の控訴審で賠償金が増額 原告は「支配・服従」の構造を訴える(2024年2月23日)

損害賠償は一審から増額

数々のハラスメント行為

相談を受けた教授やハラスメント防止室の問題

渡部氏のハラスメントについて深沢氏から相談を受けた、当時現代文芸コースの主任を務めていた教授は「面倒なことに巻き込まれるのは嫌だな」と繰り返し、「大したことない」「セクハラというのはもっとすごいやつだ」と発言するなどして、適切な対応を怠ったという。

さらに、同教授は「君がホワッとしているせいでつけこまれる」「男性を勘違いさせてしまうような挙動がある」など、深沢氏に落ち度があるかのように述べたほか、「ハラスメント委員会にいくと調査とかとても煩雑で大変なんだよ」「外に言わないでほしい」と深沢氏に口止めも要求。

また、早稲田大学のハラスメント防止室にも退学者の訴えは取り上げないかのような対応をする、相談員が正職員ではないために専門知識や経験に乏しく、立場も弱いので大学に対してハラスメント防止室が強く対応することもできない、といった問題があるという。

訴訟では、相談を受けた教授やハラスメント防止室の問題は早稲田大学全体の責任であるとして、大学に損害賠償が請求された。

「学ぶ権利を踏みにじられた」深沢氏の訴え

原告側は、渡部氏が行った個々のハラスメント行為についてだけでなく、深沢氏が入学する前から接触を行い、恩を着せたり罵倒したりすることを通じて「支配・服従」の関係を築いたこと(「エントラップメント型性暴力」)を問題視している。

会見に参加した鈴木悠太弁護士は、裁判所は支配関係に関する原告側の主張を取り上げず、あくまで個々の行為についてのみ取り上げたことについて、無念さをにじませた。

ハラスメント対策について研究している、労働政策研究・研修機構の副主任研究員の内藤忍氏も会見に参加して、日本では諸外国に比べてセクハラ訴訟の賠償額が低いことを指摘。控訴審で一審から増額したとはいえ、請求額の二割にも満たない金額しか認められなかったことに遺憾の意を示した。

「(ハラスメントは)性差別の結果であるとの認識が(裁判所に)ないから、賠償額が低く見積まれてしまう」(内藤氏)。賠償額が低いために、加害者に対しても組織に対してもハラスメントの抑止・防止効果が働かないという問題を指摘した。

深沢氏は、2018年に報道によってハラスメントが公になった後にも渡部氏は著作を出版して業界に受け入れられている一方、被害者である自身は退学を余儀なくされて執筆に集中することも難しくなったことの理不尽を訴える。

「教員によって学ぶ権利を踏みにじられた学生に向かって学問の自由などと高々と語ってしまう。その矛盾、その自覚のなさに恐怖すら覚えます」と、大学側の対応も批判した。

「大学という学ぶ権利が保障されているはずの場所で教員から性暴力が行われるなどということは、二度とあってはならないはずです。学生であった被害者が裁判を起こし、こうして記者会見をするということが私で最後となるように、どうか皆さん自身の手で社会を変えていただきたく思います」(深沢氏)