【詳報】安倍派・世耕弘成氏、裏金還流復活「反対した」 では誰が?いつ?「私が知りたい」 参院政倫審(2024年3月14日『東京新聞』)

 
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、参院政治倫理審査会(政倫審)が14日午前10時すぎから、全面公開で始まった。
最初に登場したのは、安倍派の有力者「5人衆」の一人、世耕弘成(せこう・ひろしげ)前参院幹事長。派閥パーティー収入のキックバック(還流)の取り扱いが協議された会合に出席したとされており、裏金づくりの実態解明につながるか注目が集まる。
また、「一見さんお断り」の高級洋菓子店から頻繁に購入していた還流資金の使い道については、どんな言及があったのか。
世耕氏の審査の模様を詳報した。(デジタル編集部、政治部)

◆10:08 世耕氏の弁明始まる

世耕氏は、両手で持った資料を読み上げながら弁明を始めた。
「国民の政治に対する信頼を大きく毀損(きそん)したことについて、清和政策研究会(安倍派)の幹部であった一人として深くお詫びを申し上げます」。こう述べると頭を下げた。
 
参院政治倫理審査会に臨む自民党の世耕弘成前参院幹事長=国会で

参院政治倫理審査会に臨む自民党世耕弘成参院幹事長=国会で

続いて、所属する安倍派での裏金づくりへについて、次のように語り、自身の関与を全面的に否定した。
「清和会の会計や資金の取り扱いに関与することは一切なかった」
「パーティー券販売のノルマ、販売枚数、還付金額、ノルマ超過分の還付方法について関与したこともなければ、報告・相談も受けていなかった」
「私自身は派閥で不記載が行われていることを一切知りませんでした」

◆10:12 「還流認識していたら是正進言した」

「私は政治とカネの問題について、若手議員の頃から問題意識を持って取り組んでまいりました」
こう強調した世耕氏。続いて、キックバックについての自身の認識を語り出した。
「今回の事態が明らかになるまで自分の団体が還付金を受け取っているという意識がなかったため還付金について深く考えることがなかった」と説明した。
「もっと早く問題意識を持って還付金についてチェックをし、派閥の支出どころか、収入としても記載されていないこと、議員側の資金管理団体でも収入に計上されていないことに気づいていれば歴代会長に是正を進言できたはずとの思い」とし、「事務局の誤った処理の是正を進言しておれば、こんなことにならなかったのにと痛恨の思いだ」と述べた。

◆10:13 還流資金「不正な支出はない」

2018年からの5年間で派閥から1542万円をキックバックされた世耕氏。
2020~22年分について、組織活動費のうち贈答品代として支出した約60万円は「どうしても領収書を発見することができなかった」と説明。金額・時期・支出先が不明だとした。
還流されたカネを自身の政治団体の収支報告書に記載していなかった理由については、「清和研から現金の形で渡され、管理運用されていたものであり、収支報告書の簿外での管理であったため、私自身や法律事務所のチェックに引っかからなかった」と明かした。
「ノルマ達成が精一杯」だったとし、キックバックの慣行を「ほとんど意識しないでパーティー券の販売をしてきた」とも語った。
「私の管理監督が不十分であったとのそしりは免れず、国民の皆様の政治不信を招き、関係者に多大なご迷惑をおかけしていることについて、心からお詫びを申し上げる」と陳謝したものの、「すべて政治活動費」「不正な目的や私的な目的でなされた支出、いわゆる裏金的支出は一切確認されていない」と強調した。
キックバックされた総額 1542万円(2018~22年)

世耕氏の説明は… 「政治資金の管理は秘書に任せきりの状況。還元分があるとの認識は持っていなかった」「現状把握できている支出はすべて政治活動費で、不正な目的や私的な目的でなされた支出は一切確認されていない」(1月19日の会見)

◆10:19 キックバック「少なくとも十数年前には」

世耕氏の弁明が終わり、議員による質疑が始まった。
質問に立った自民の佐藤正久氏は、安倍派で派閥パーティー収入のキックバックが始まった経緯を尋ねた。
世耕氏は「いつ始まったか、これ本当にわかりません。少なくとも、十数年前には始まっていたというふうに思う」と答えた。
続いて佐藤氏は、安倍派で2022年4月にキックバックの廃止を決定したにもかかわらず、その後、復活した経緯について、世耕氏の「ご見解」を求めた。
世耕氏は、安倍氏から2022年4月上旬にキックバックは止めるとの「ご指示」があったと説明。
7月の安倍氏の死去後、8月の上旬に世耕氏と塩谷立氏、下村博文氏、西村康稔氏、安倍派の事務局長が集まった幹部会合については「(パーティー券の販売で派閥が設定した)ノルマをオーバーしてしまった人(議員)がいると、どうしようか、意見を聞かせてほしい、そういう趣旨の会合だった」と説明した。

◆10:33 還流廃止決定「安倍元首相の部屋で」

立憲民主党蓮舫氏は、焦点になっている安倍派でキックバックが廃止となった後、復活した経緯を追及した。
 
 
真っ先に切り込んだのは、2022年4月に安倍派でキックバック廃止を決めた経緯だった。
3月1日の衆院政倫審で安倍派幹部は、当時の派閥会長だった安倍晋三元首相の提案を受け、2022年4月に幹部らが集まって、キックバックの廃止を決定したと証言していた。
世耕氏も、このときの幹部の会合の存在を認めた。
世耕氏によると、2022年4月、安倍元首相から議員会館の部屋で、キックバックを止めるとの方針を伝えられたという。
その会合には、安倍氏と世耕氏のほか、下村博文氏、西村康稔氏、塩谷立氏と事務局長だった松本淳一郎被告=政治規正法違反(虚偽記入)罪で起訴=が集まったと明かした。
世耕氏は、自身が会合に呼ばれた理由について「それ(キックバック廃止の方針)を参院側に伝えて欲しいということと認識している」とした。

◆10:35 還流復活「私は連絡役、分からない」

続いて、蓮舫氏は、安倍派でキックバックが復活した経緯を尋ねた。
焦点となっている2022年8月の安倍派幹部の会合だ。
世耕氏は、安倍元首相が死去した後の2022年8月5日、派閥幹部の間で「(パーティー券販売の)ノルマをオーバーしてしまっている人が結構出てきているのでどうしようかという意見交換の場があったと思う」と明かした。
2022年8月の幹部会合を巡っては、幹部の間で証言が食い違う。
会合に出席した西村氏は「結論は出ていない」と証言。一方で、塩谷氏は「(キックバックを廃止すると)困る人がたくさんいるから継続でしょうがないかなというぐらいの話し合いで継続になったと理解している」と話している。
 
 
世耕氏の見解は「(2022年)8月5日の会合で復活が決まったということは断じてございません」と発言。西村氏の発言を支持した。
結論が出なかったとう根拠として、世耕氏は「現金による還付(キックバック)は止めたという(安倍元首相の方針を)守るべきだという意見を、冒頭に申し上げた」と明かした。
その場では「代わりに何らかの資金の手当てをする方法があるだろうかという議論になった」といい、「収支報告書にも出る形で返そうではないかというアイデアが出て、私はそれなら反対しないという意見を述べた気がする」とも語った。
では、いつ誰がキックバック復活を決めたのか。
蓮舫氏が繰り返し追及しても、世耕氏は「はっきり言って分からない」「私自身は参議院への連絡役の立場という認識だった」と発言。
「あのときフォローしておけば、現金を返すという案を聞いて『それはだめだ』と私は言えた」と振り返り、「だれが(現金での還付を)決めたのか、私自身も知りたい」と述べた。
 
参院政治倫理審査会に臨む自民党の世耕弘成前参院幹事長=国会で

参院政治倫理審査会に臨む自民党世耕弘成参院幹事長=国会で

◆10:50 参院議員への全額還流「相談なかった」

安倍派では、2019年と2022年の参院選で改選を迎える参院議員に、その年の派閥パーティー券の売り上げを全額キックバックしていた。
世耕氏は安倍派の参院議員らでつくる「清風会」の会長を2016年から務めていた。
改選参院議員への全額キックバックについて「誰が決めたのか」と問われた世耕氏は、「私には何の相談もなく勝手に決まっていた」と答えた。
蓮舫氏は「清風会会長のアタマを通り越して衆院(議員の安倍派会長)が勝手に決めたのか」と迫ったが、世耕氏は「安倍(晋三)さんが決めたのか、細田(博之)さんが決めたのか、その前の方が決めたのか、残念ながら分からない。私には何ら事前の連絡がなかったというのが真実だ」と語気を強めた。

◆10:58 還流分で高級クッキー「有権者に渡したことない」

蓮舫氏は、世耕氏が老舗洋菓子店の高級クッキーを地元支援者に贈っていた問題についても、「こういう使われ方を堂々と胸を張って言えるのか」と追及した。
世耕氏の資金管理団体の訂正された収支報告書によると、キックバック分の主な使途は「贈答品代」で、この老舗洋菓子店には2021年と2022年で総額37万8000円分を支出していた。
世耕氏は「与野党の政治家との会食の際の手土産、あるいは経済界とかその他の人から食事をご馳走になる時に、せめてものこちら分の負担という思いで返しているものだ」と説明。「(地元の)和歌山の有権者には、私の資金管理団体で購入した贈答品を何一つ渡したことはない」と強調した。

◆10:58 公明・竹谷氏「正直申し上げてひどい」

公明党竹谷とし子氏は、世耕氏が「キックバックの慣行を知ったのがいつだったのか」を質問した。
世耕氏は「それが、ですから、なかなかはっきり記憶が」と言いよどみ、「10数年前、うちの事務所で受け取っていたのが2013年頃ということでありますから、その頃にはあったんだろう」と答えた。
それでも自身がキックバックを受けていたことを知ったのは「報道で明らかになった後」という。
「秘書が」「秘書が」と関与を否定する世耕氏に、「正直申し上げてひどい管理監督責任のありようだ」と批判した。

◆11:12 納税しないのか?世耕氏「使い切った」

日本維新の会の音喜多駿氏は、これまでの世耕氏のやり取りに対し、「本日の弁明からここまでの質問で、知らない、関与してない、わからない、記憶がないという旨の発言を既に20回以上している。これで世耕議員のご家族友人、熱心な支援者は本当に納得されるのか」と批判した。
キックバックされた資金について「納税されるつもりはないか」とただしたが、世耕氏は「雑所得に当たらない。きちっと政治活動で全て使い切っている」と胸を張った。

◆11:29 還流資金「すべて政治活動に」

「パーティー券のノルマや販売数、(環流分を)帳簿外で管理していたことについて(世耕氏が)把握していなかったというのは考えられない」
国民民主党舟山康江参院議員が迫った。
世耕氏は「(2012年の)官房副長官就任後は、事務所へ行ったのは年に3回くらい、10分程度という状況。政治資金については事務所任せになっていた」と、自身の関与を否定した。
還流を受けた分の使途については、大半の領収書が保管されており把握できたと説明。「基本的には政治活動、特に事務所の運営経費や食事の相手方への贈答品につかっていることがはっきりした。すべて政治活動に使っている」と述べた。
これを受け舟山氏は「不正な支出、裏金的な支出はないとの言葉は、信じることができない。選挙の時に多めに還付されていたことを考えると、選挙のために使われていたのではないか」と追及。
世耕氏は「還付金の使途は収支報告の訂正を見ていただけたらつまびらかになる。選挙運動で使ったとしたら収支報告を明らかにしなければならない。それをチェックすれば分かるのではないか」と主張した。

◆11:37 還流「誰が始めたか確証ない」

共産党山下芳生氏は、安倍派幹部らの証言からキックバックが「1997年から2000年の間につくられたと推察される」とし、当時、派閥の会長だった森喜朗元総理の関与を指摘した。
世耕氏は「誰が始めたかっていう確証は全然ない」「決めつけるのもやや問題があるんじゃないか」などと述べた。

◆野党は32人に要求、応じたのは3人だけ

参院での政倫審実施は1985年の設置後、初めて。
野党はキックバックを受けていた参院議員32人全員の出席を求めていたが、応じたのは世耕氏、橋本聖子元五輪相、西田昌司参院議員の3人だけだった。
衆院では2月29日と3月1日に政倫審を実施。29日は岸田首相と二階派幹部の武田良太総務相、1日は安倍派幹部の西村康稔経産相松野博一官房長官塩谷立文科相、高木毅前国対委員長が出席した。

世耕弘成(せこう・ひろしげ) 1962年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本電信電話(現NTT)勤務などを経て1998年の参院補選で和歌山県選挙区から出馬し初当選し現在5期。経済産業相自民党参院幹事長などを歴任。近畿大学の理事長も務める。