年収の壁「103万→123万円」明記 与党税制大綱が決定(2024年12月20日『日本経済新聞』)

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取りまとめた与党税制改正大綱の冊子を手にする自民党税調の宮沢会長(右)と公明党税調の赤羽会長(20日、国会内)
自民、公明両党は20日、与党政策責任者会議で2025年度の与党税制改正大綱を決定した。所得税の非課税枠「年収103万円の壁」を123万円にする方針を明記した。178万円への引き上げを求めた国民民主党との協議はいったん打ち切られたものの、改めて調整する。
政府は年内に大綱を閣議決定し、25年の通常国会に関連法案を提出する。与野党の協議次第では提出前後に内容を修正する可能性も残す。
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自民党の宮沢洋一、公明党赤羽一嘉税制調査会長は大綱決定後、国会内で記者会見した。宮沢氏は非課税枠を123万円にすることによる減収は6000億〜7000億円を見込んでいると説明した。
「物価が上がり、経済が大きくなっている中で財源を考えなくていいレベルの引き上げだ」と話した。地方への影響を考慮し住民税の基礎控除は据え置く。
国民民主は1995年以降の最低賃金の伸びを根拠に178万円への引き上げを訴えた。宮沢氏は「最低賃金は政策的に上げてきたので、その数字を使うことは問題がある。税は基本的に理屈の世界だ」と反論した。
基礎控除を現行の48万円から58万円に、給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円に、10万円ずつ引き上げる。基礎控除の引き上げ幅は身近な品目の物価上昇率を根拠とした。25年1月から適用し年末調整で対応する。
高所得者の減税効果は抑制する。控除を段階的に減らす要件を2400万円から2350万円に下げる。
自民、公明、国民民主の3党の幹事長は11日、103万円の壁の25年からの引き上げで合意していた。大綱に「178万円を目指して、来年から引き上げる」「ガソリンの暫定税率は廃止する」と合意書の文言を引用した。自公として真摯に協議するとも記した。
3党の幹事長は20日も会談し「合意した内容の実現に向け、引き続き関係者間で誠実に協議を進める」と文書で確認した。
19〜22歳の子の親の税負担を軽くする特定扶養控除は子の年収要件は現行の103万円以下から150万円以下に緩和する。年収150万円を超えても188万円以下にかけて控除額を段階的に減らす仕組みとし、25年から適用する。
学生バイトの働き控えを解消し、サービス業などの人手不足に対応する。
子育て支援を充実させる。高校生年代の子を持つ親らの扶養控除は当初の縮小方針を変更し現行水準を維持する。子育て世帯の住宅ローン控除の優遇などは1年延長する。
資産形成も後押しする。個人型確定拠出年金iDeCo、イデコ)の掛け金の限度額を引き上げる。イデコと企業型確定拠出年金(DC)の合計限度額を月7000円上げ6万2000円とする。月2万円だったイデコ単体の掛け金上限は取り払う。
防衛力強化のための増税は一部の実施時期を決めた。所得税、たばこ税、法人税のうち、たばこ税と法人税の2税を26年4月に引き上げる。所得税増税時期の決定は先送りした。
自公両党は10月の衆院選過半数を割り込み、少数与党となった。法案や予算案の成立には野党の賛成が必要で国民民主や日本維新の会などと政策協議を進めている。
大綱は「税は国家なり」という書き出しから始めた。日本経済は「ようやく長きにわたるデフレからの脱却が見えてきた」と指摘した。「賃上げと投資がけん引する成長型経済」への移行に対応することを重視した。