柿沢前議員に執行猶予付き有罪判決 江東区長選買収事件(2024年3月14日『日本経済新聞』)

 
 
2023年4月の東京都江東区長選を巡る公職選挙法違反事件で、東京地裁は14日、同法違反(買収など)の罪に問われた前衆院議員の柿沢未途被告(53)に「選挙の公正という民主主義の根幹への信頼を揺るがす悪質な犯行」として懲役2年、執行猶予5年(求刑懲役2年)の有罪判決を言い渡した。

向井香津子裁判長は判決理由で一連の買収罪を認定した。その上で動機を「(自らの)自民党内での立場や影響力を強めるため」と指摘。「買収のために投じた金額は多額で、選挙の公正を害した程度は大きい」と非難した。

柿沢前議員は紺のスーツ姿。判決言い渡しを証言台の前で緊張した様子で聞き入った。聞き終わると立ち上がり、裁判長に向けて一礼。傍聴席には元秘書や区議らの姿もあったが、振り返らずに退廷した。

判決によると、柿沢前議員は秘書らと共謀し、23年2〜10月に前区長の木村弥生被告(58)=公選法違反罪で在宅起訴=を当選させる選挙運動の報酬として、区議ら7人に計約220万円を提供し、3人に計60万円の提供を申し出た。

また木村前区長と共謀し、区長選の期間中に投票を呼びかける有料インターネット広告を掲載した。

検察側は柿沢前議員が木村前区長の選挙運動の計画立案などをした「組織的選挙運動管理者」に該当すると判断。迅速に手続きを進める「百日裁判」で審理された。木村前区長の初公判期日は18日に指定されている。

柿沢前議員は初公判で起訴内容を認めたが、被告人質問では具体的な経緯や現金の趣旨について黙秘した。最終意見陳述では「国民の負託をいただきながら職責を全うできず、期待を大きく裏切った。この罪は万死に値すると思う」などと述べた。

柿沢前議員は江東区を選挙区とする衆院東京15区選出。09年の衆院選で初当選し、5期目だった。21年の衆院選後に自民党から追加公認され23年9月、法務副大臣に就任。木村氏の有料ネット広告を発案したと認めて同10月に辞任し、24年2月に議員辞職した。