旧統一教会の解散手続き 政府は審理状況を説明せよ(2024年3月13日『中国新聞』-「社説」)

 高額献金霊感商法などの深刻な被害が社会問題となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡り、政府による解散命令請求の審理が東京地裁で進む。

 民法不法行為を根拠とする解散命令請求は初のケースだ。教団が宗教法人にふさわしいのか厳正に判断する必要がある。憲法が保障する「信教の自由」に関わる非訟事件として、重要な先例となる。

 ところが政府は審理状況の説明を一切していない。非公開がルールとはいえ、一連の手続きが公開されないことに違和感がある。審理の透明性を確保し、検証可能であるためにも、できる限り情報を開示すべきだ。

 文部科学省は、教団の損害賠償責任を認めた民事判決などから高額献金などの被害規模は約1500人、約200億円に上ると認定。解散命令の要件である「法令違反」には、これら民法不法行為も含まれるとして、昨年10月に解散命令を請求した。

 2月に文科省、教団双方の意見を聴く初の審問が開かれた。だが文科省は審問があったかどうかさえ明らかにしていない。一方で教団の代理人弁護士は審問後、報道陣の取材に応じた。教団は徹底的に争う姿勢で、有識者の意見書や現・元信者の証人尋問など今後の立証計画を地裁に示したという。

 政府は刑事判決の後ろ盾がない中、請求段階で手の内を隠したかったのかもしれないが、審理段階では双方が既に主張や証拠を把握している。調査や立証方針に揺らぎがないなら、プライバシーに配慮しつつ情報を公開しても支障はないはずだ。教団側の言い分だけが社会に伝えられる現状は健全とはいえまい。

 政府の質問権行使に対する回答拒否を理由に、教団に過料(行政罰)を科するよう求めた東京地裁への申し立てでも政府は秘密主義を貫く。質問項目が信教の自由を侵害することがないか宗教法人審議会のチェックを受けたが、その議論は公表されなかった。

 献金被害者救済の特例法に基づき教団の財産監視を強化する「特別指定宗教法人」の指定見送りにも、被害者らから疑問の声が上がる。政府は財産の隠避・散逸の恐れがなく「指定宗教法人」にとどめたと説明するが、財産の海外流出はこれまでの経緯から十分考えられる。政府の対応に腰が引けた感は否めない。

 盛山正仁文部科学相が教団側から選挙支援を受けたとされる疑惑も払拭できていない。盛山氏が請求の責任者に居座り続けることで審理に影響が出るのでは、と国民が思うのは当然である。

 こうした政府の姿勢には、被害の救済や抑止への熱意がどこまであるのか、被害を見て見ぬふりしていた自民党議員が教団との関係を本当に断ち切れているのか、疑念を抱かざるを得ない。

 岸田政権の支持率低迷を招いたのは旧統一教会問題だったはずで、解散命令請求をして終わりではない。審理は長期化が予想される。審理に対する国民の信頼を高める努力を尽くす必要がある。