民法不法行為を根拠とする解散命令請求は初めてだし、政府の質問権行使も初のケース。いずれの裁判も憲法が保障する「信教の自由」に関わり、重要な先例となるが、非訟事件手続法に基づき非公開だ。

 これに対し、政府は審理状況の説明を一切せず、もっぱら教団側の説明が社会に伝えられている。この現状は、とても健全な姿とは言えまい。

 解散命令を請求した盛山正仁文部科学相が前回衆院選で教団関連団体の支援を受けた疑惑も払拭されておらず、裁判の公正さは社会の重大な関心事だ。政府は透明性を確保するため審理の情報を積極的に開示すべきだ。

 この2月下旬には、解散命令請求に関して、文科省、教団双方の意見を聴く、初の審問が東京地裁で開かれた。

 文科省は、教団の損害賠償責任を認めた民事判決などから高額献金などの被害規模は約1500人約200億円に上ると認定。解散命令の要件である「法令違反」には、こうした民法不法行為も含まれるとして、昨年10月に命令を請求した。

 教団側は徹底的に争う姿勢で「法令違反とは刑罰法令違反を指し、民法は含まれない。解散命令の要件に当たらない」などと反論している。

 審問では全面的な主張の対立が予想されたが、文科省は「非訟事件」を理由に、審問があったかどうかすら、明らかにしなかった。一方で教団の代理人弁護士は事後に報道陣の取材に応じた。

 それによると、教団会長が「文科省の主張は明らかな間違い」などと意見陳述。教団側は、有識者の意見書や現役信者の陳述書などを提出するほか、被害を訴える元信者らの証人尋問請求も検討するという今後の立証計画を示したという。

 こうした内容から、初審問は論点整理のような位置付けだったと思われるが、あくまで真っ向から主張が対立する一方の当事者の説明である。本来なら文科省の説明と突き合わせる必要があることは言うまでもない。審理は長期化が予想される。文科省は責任ある情報を発信し、審理に対する国民の信頼を高める努力を尽くすべきだ。

 過料の申し立ても、一貫して秘密主義に覆われてきた。

 文科省の質問権行使は一昨年11月から7回にわたり、毎回、質問項目が「信教の自由」を侵害することがないか宗教法人審議会のチェックを受けたが、その議論は公表されなかった。

 500項目以上の質問に対し100項目以上の回答拒否があったとして、昨年9月に東京地裁に過料を申し立てたが詳しい説明はなく、質問の内容や回答拒否と判断した理由などは今も不明だ。

 その後も文科省から審理に関する情報開示はない。一方の教団は地裁に提出した意見書などを随時公表している。

 請求や申し立て段階では、政府は手の内を明かしたくなかったのかもしれないが、審理段階では双方が既に主張や証拠を十分に把握している。プライバシーなどに配慮しつつ情報を開示しても、何ら支障はないはずだ。