森繁久弥さん主演の喜劇映画「社長シリーズ」で欠かせぬのは三…(2024年3月13日『東京新聞』-「筆洗」)

 森繁久弥さん主演の喜劇映画「社長シリーズ」で欠かせぬのは三木のり平さんの演じる「宴会部長」だろう。仕事の方はからきしだが、宴会や接待となると大張り切りで口癖は「ぱーっといきましょう。ぱーっと」 

社長シリーズ(左から2人目が三木のり平)

 ▼のり平さんによるとこんな人物として演じていたそうだ。子だくさんな上にこわいおかみさんがいる。おこづかいに不自由しているので会社のお金を使って酒を飲みたい、芸者さんと遊びたい。情けない人物だが、当時ならまだ理解できるところもあったか

▼この時代に品のない懇親会を「ぱーっと」やっていたと聞けば、あの「宴会部長」も腹を立てるかもしれない。しかも開いていたのは政権を担う自民党。同党和歌山県連が主催した会合にあられもない姿の女性ダンサーを招いていた問題である

▼党青年局の国会議員や近畿ブロックの地方議員が参加し、中にはダンサーさんに触り、口移しでチップをあげる人物もいたという

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▼女性を性的にモノ扱いするような時代錯誤な宴会を政治家が喜々として開いていれば、世間が許すはずもない。時代を読むべき政治家が時代に目をつぶっている。その無神経さに腹が立つ

▼「宴会部長」役だったらしい和歌山県議は責任を取って、離党した。ダンサーを招いたのは多様性について問題提起するためと説明していた。苦しい言い訳にまず噴き出し、その後で泣きたくなる。

 

(2024年3月13日『山形新聞』-「談話室」)

 

▼▽今年の米大リーグ開幕戦は日本人スターの競演が見ものだ。20日、韓国で行われるドジャースパドレス戦。ダルビッシュ有投手がパドレス先発として大谷翔平選手と向き合う。両者の対決は、日米を通じて初という。

▼▽米国では他にも日本人の活躍が目立つ。映画の祭典アカデミー賞で「君たちはどう生きるか」(宮崎駿監督)と「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)が、受賞の快挙を果たした。野球にせよ映画にせよ、さまざまな国の逸材が集う多様性の坩堝(るつぼ)で同胞の実力が評価されている。

▼▽そんな様子に接して誇らしさを覚えるにつけ、国内のセンセイ方の行動にはがくぜんとしてしまう。自民党和歌山県連が昨年11月、主催した会合に露出の多い女性ダンサーを複数招いていた。それだけではない。懇親会では、ダンサーに口移しでチップを渡す参加者もいた。

▼▽ダンサーを呼んだ地元和歌山県議の当初の釈明が振るっている。記者団に語ったのは「多様性の重要性を問題提起しようと思った」。ダンサーの招致や口移しが多様性? 女性議員を中心に、自民内部からも批判が上がるのは当然だ。国際的に日本の品位が疑われかねない。