自民党内からも「まるで昭和」と嘆きの声 女性ダンサー会合が裏金問題に追い打ち(2024年3月13日『東京新聞』)

 
 派閥の政治資金パーティー裏金事件で内閣支持率が下落する中、露出の多い衣装の女性ダンサーを招いた党の会合開催が発覚し、緩みっぱなしの規律が問われることになった自民党。政府内からも「極めて不適切な内容の余興が企画、実施され、国民の不信を招いたことは誠に遺憾」(加藤鮎子こども政策担当相)と批判がやまない。不祥事が相次ぎ、裏金事件では議員の処分がいまだ行われず、岸田文雄首相が唱える信頼回復への道のりは見えない。(井上峻輔、大野暢子)
取材対応する藤原崇氏=12日、国会で

取材対応する藤原崇氏=12日、国会で

 「最終的な責任者は私で、本当に申し訳ない」。女性ダンサーを招いた昨年11月の党和歌山県連主催の会合に出席していたとして、党青年局長を辞任した藤原崇氏(衆院岩手3区)は12日、国会内で記者団に頭を下げた。後任に起用された鈴木貴子青年局長は党本部で「信頼回復に党一丸で取り組まなくてはいけない中、火に油を注ぐ事態で、大変心苦しく、国民におわびしたい」と陳謝した。

◆後を絶たない不祥事

 会合には青年局長代理の中曽根康隆氏(衆院群馬1区)も出席し、藤原氏とともに役職を辞任。県連青年局長として会合を企画した和歌山県議には非難が殺到し、離党に追い込まれた。
 党の規律を協議する11日の党紀委員会では「こんな昭和の政治家みたいなことがまかり通っているのは遺憾だ」と時代錯誤の行為に苦言が続出。党が裏金事件に揺れる「最悪のタイミング」(閣僚経験者)で露呈した「目的を大きく逸脱した極めて不適切な会合」(幹部)により、党の体質や議員の資質そのものが疑われる異常事態となった。
 
 岸田政権が発足した2021年10月から、閣僚や議員らの不祥事は後を絶たない。最近でも、昨年10月以降、副大臣政務官の計3人が不倫や税金滞納問題などで立て続けに辞任した。
 さらに、派閥の裏金事件が強制捜査となり、年明けには安倍派の現職議員3人が立件された。衆参両院で政治倫理審査会が開かれているが、裏金づくりにかかわった議員は説明責任を果たさず、事件の実態解明や再発防止の動きは鈍い。

◆「幹部が責任を取らない」と批判

 皮肉なことに、ダンサー会合に出席していた藤原、中曽根両氏は裏金事件後、声高に「党改革をリードしていきたい」と唱えてきた当事者。その言葉とは裏腹の行動にベテラン秘書は「議員の質がここまで下がっているということだ」とあきれ果てる。
 安倍派の中堅議員は「有権者に一番批判されているのは、わが派の幹部が責任を取らないことだ」と身内に矛先を向ける。二階派の中堅議員は「派閥幹部は自分で進退を判断すべきだ。それをせずに国民が許してくれることはない」と述べ、党の処分や政治責任を明らかにするよう求める。
 不祥事を繰り返し、けじめすらつけられない自民に対し、共産党小池晃書記局長は記者会見で切り捨てた。「裏金事件の事実を明らかにしないままお手盛りの処分や党則改正をやっても、国民は納得しない」