「エネオスHD内では、トップ3人が3年連続でセクハラ問題を起こして退場し、動揺が走っています」(経済部記者)
売上高は10兆円超。石油元売り大手エネオスHDの子会社であるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)の安茂会長が、懇親会で女性に対し不適切な行為をしたとして、2月21日に解任された。一体、同社で何が起きているのか。
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エネオスHD内で広がる疑心暗鬼
エネオスHDでは、2022年8月に不適切行為で、当時の杉森務会長が辞任。23年には、当時の齊藤猛社長がセクハラで解任された。そして今回、エネオス傘下で再生可能エネルギーを手がけるJREの会長が解任された。
「安氏は鹿島建設出身。JRE立ち上げ時の社長で22年に同社がエネオスに買収されてから会長になった。六本木周辺で飲み歩き、人前で女性へのボディタッチをするなど脇が甘い人です」(エネオス社員)
幹部たちの相次ぐ退場劇に、エネオスHD内では、「疑心暗鬼が広がっている」(同前)という。杉森氏と齊藤氏の問題が発覚した際には公表直前に一斉メールでHDの従業員への説明があったが、安氏の件はJRE関係者にのみ知らされたからだ。 「社外から聞かされて知った人もいるほどで、社内SNSでは、『政治的な風土が悪い』と実名で批判的な投稿をする社員もいました」(別のエネオス社員)
“怪情報”が社内SNSで飛び交う
政治的な風土とは、合併をくり返し巨大化したエネオスの歴史を指す。エネオスは10年に新日本石油がジャパンエナジーを合併したことに始まり、17年には業界3位だった東燃ゼネラル石油を合併した。
「杉森氏や齊藤氏ら経営トップは旧日石系が占めています。旧日石系には、『酒に強いと出世する』とか『野球部部長は偉くなる』『エネ雄(オス)』などと言われる古い体質の名残がある。一方の旧東燃は外資系でその風土に相容れない。合併時に東燃社内で大きな反発があり退社した者も多い」(業界紙記者)
こうした歴史もあり告発の背景に権力闘争があると示唆する“怪情報”が社内SNSで飛び交っているという。前出のエネオス社員が解説する。
齊藤氏にセクハラと解任について聞くと…
「齊藤氏のセクハラ飲み会に同席していて、辞任に追い込まれた谷田部靖元副社長は、JRE買収に大きく関与したとされ、安氏にも近い。つまり、この3カ月で齊藤、谷田部、安のラインが社を追われたため、旧日石系に反発する何者かが“刺した”のでは、と囁かれているのです。齊藤氏の解任後、社長代行を務めたのは東燃出身の宮田知秀副社長。外形的に“復讐劇”は成功したことも理由です」
安前会長の自宅を訪ねたが、取材には応じなかった。 齊藤氏に自身のセクハラと解任について聞いた。 「相当、あの時は飲んだような気がする。本当にわからない……」
――一連の内部通報の背景に権力争いがあるのか。
「経営統合を繰り返したから、派閥を作らないようにとか、そういうのをいろいろ変えようとしてきたんです。僕はないと信じたい」
「不適切行為が連続して発生していることは極めて遺憾」
――セクハラで幹部が辞職し続けているが。
「トップが一時的にせよお酒に飲まれた。それは反省しなければいけない。あとは会社にお願いします。僕は出禁なんで……」
エネオスにも見解を問うと回答があった。
「当社では、出身会社や部門に関係なく相応しい人材を登用しております。元会長の不祥事を受け、再発防止に全力を挙げていた矢先にも関わらず、不適切行為が連続して発生していることは極めて遺憾です」
会社再生のエネルギーは残されているのか。
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