「明治大学では戦争反対の表明もできないのか」 警察沙汰にもなった明大「立て看板」問題の実相(2024年3月12日)

 

■学生が警察署に連行

 大学側の対応を受け、学内での自由な言論が認められていないと問題意識を抱いた二人は、掲示板がダメなら立て看板で表現活動をしようと、「明治大学立て看同好会」を立ち上げた。そしてキャンパスの不自由さを多くの人に訴えるべく、11月上旬の学園祭でビラを配り、「自由な大学取り戻そう」と記した立て看板を設置することにした。

 だが学園祭当日、またしてもトラブルが勃発する。二人が目を離している間に大学職員によって立て看板が撤去され、さらにはビラ配りに協力していた他大の学生が近隣の高井戸警察署に連行されたのだ。

 広報課はこの日の対応について、以下のとおり回答している。

「立て看板に限らず、通行スペースの妨げになるものなどは大学としては設置を認めておりません」

「明大祭(※学園祭)期間中、明大祭と無関係のビラが大学構内のいたるところに無許可で掲示されていました。また、掲示している人物を目撃したという情報が複数寄せられました。こうした経緯から、安全管理・防犯の面で警察にこの件を相談しました」

 A輔さんによると、協力者の他大生は大学職員から身分証を見せるよう要求されたものの、「学園祭期間中は外部から自由に人が入れるのに、なぜ身分を証明する必要があるのか?」と拒否した結果、通報され、高井戸署で始末書を書くことになったという。

■大学同士の“連帯”が広がる

 しかしA輔さんとB美さんは、学園祭での騒動を受けてもなお、引き下がらない。

 大学事務局に対し、「立て看板は学園祭の実行委員会に事前に許可を得て持ち込んだもので、正当性がある」「撤去した立て看板をいつまでも占有しているのはおかしい。泥棒しないで早く返してほしい」と、文書や口頭で何度も抗議した結果、12月下旬にようやく看板が戻ってきた。さらに、東京大学の「東大立て看同好会」の協力により、返還された立て看板は同大駒場キャンパスの一角に設置してもらえることになった。

 実は昨年11月以降、早稲田大、慶應大、国際基督教大青山学院大など、有名大学で続々と立て看同好会が発足する「ちょっとしたブーム」(B美さん)が起きており、大学同士の連帯が広がっている。

「学園祭シーズンの11月、いろいろな大学でパレスチナに連帯する立て看板が設置されたのですが、明大と同じように大学職員によって撤去される事例が相次いだことで、学内規制に反対する動きが生まれました」(B美さん)

 最近は、立て看同好会の先駆者である東大が“SDGs17の目標”のオマージュとして打ち出した「すべての大学に立て看板を」というスローガンのもと、大学同士で情報を共有したり、協力してビラを配ったりしているという。

 とはいえ、学生が大学相手に立ち向かうのは、容易なことではない。明大は昨年12月、A輔さんとB美さんに対し、「和泉キャンパスでの無許可の張り紙掲示、無許可の立て看板掲出および学外の方を学内へ招き入れてこれらのことに協力を仰いでいたこと」(広報課)について厳重注意処分を下し、反省文の提出や学部長による対面指導を課した。 

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