東日本大震災と福島第一原発の事故から きょうで13年(2024年3月11日『NHKニュース』)

 

東日本大震災と、東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から11日で13年です。被災地では道路や防潮堤といったハード面の整備がおおむね完了した一方で、被災者の心のケアなど国によるソフト面の支援が継続しています。住民の高齢化や人口の流出が進む中、長期的な視点で被災者の暮らしをどう支えていくのかが引き続き大きな課題となっています。

11日は地震発生時刻の午後2時46分にあわせて各地で追悼式が行われます。

2011年3月11日の午後2時46分ごろ、東北沖でマグニチュード9.0の巨大地震が発生し、東北の沿岸を高さ10メートルを超える津波が襲ったほか、関東などにも大津波が押し寄せました。

福島第一原発では、巨大地震津波の影響で電源が喪失し、3基の原子炉で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が発生、大量の放射性物質が放出されました。

警察庁によりますと、今月1日の時点で、
地震津波の被害などで亡くなった人は1万5900人、
▽行方不明者は2520人となっています。

また多くの人が長期の避難生活を余儀なくされ、復興庁や各都県によりますと、体調が悪化して死亡するいわゆる「震災関連死」に認定された人は、これまでに3802人と、この1年で10人増えました。

「震災関連死」を含めた東日本大震災による死者と行方不明者は、あわせて2万2222人にのぼります。

避難生活を余儀なくされている人は減少が続いているものの、復興庁の先月1日時点のまとめで、2万9328人となっています。

被災地アンケート 交流の減少や孤立の深刻化も

被害の大きかった岩手・宮城・福島の3県では、この13年で道路や防潮堤といったハード面の整備がおおむね完了した一方で、人口減少が進んでいます。

住民基本台帳によりますと、3県の沿岸と原発事故で避難指示が出ていたあわせて43自治体のうち、震災前と比べて人口が10%以上減った自治体は全体の8割にあたる35自治体にのぼっています。

こうした中NHKが岩手・宮城・福島の被災地の1000人にWEBで行ったアンケートで被災者同士の交流や地域のコミュニティー作りの活動状況について聞いたところ、▽「変わらない」が56%と最も多くなった一方、▽「やや減った」が18%、「減った」が16%となり、3割を超える人が減ったと回答しました。

住民の高齢化や人口の流出で活動ができなくなったなどの声が多く、交流が減った影響について複数回答で聞いたところ、▽「町に暮らす魅力が減った」が50%となったほか、▽「地域防災の体制が弱くなった」が26%、▽「精神的な孤立を感じている」が26%などとなりました。

被災地では住まいやインフラなどの復興は進んだ一方、いまも心に大きな傷を抱えて苦しみ、元の生活を取り戻せず前に進むことが難しい人たちもいます。

また、13年前の震災と原発事故で自宅を失った人などが暮らす災害公営住宅では、入居者の高齢化が進み、当初開かれていた住民どうしの交流イベントも減少するなどして、住民の孤立が深刻化しています。

国は震災から10年が過ぎた2021年度からの5年間を「第2期復興・創生期間」と位置づけて被災者の心のケアやコミュニティー作りなどソフト面の支援を継続していますが、長期的な視点で被災者の暮らしをどう支えていくのかが引き続き大きな課題となっています。

福島県 今も避難指示続くところも 

一方、福島県では原発事故による帰還困難区域が7つの市町村にまたがり、今も避難指示が続いています。

帰還困難区域では国の新たな枠組みの中で避難指示解除へ向けた動きが進められていますが、一部にとどまり、除染廃棄物の県外での最終処分をめぐる問題の先行きも不透明なままです。

また、福島第一原発で行われている処理水を薄めて海へ放出する作業は、これまでに目立ったトラブルはなく、福島県産の海産物の市場価格に影響はみられていませんが、汚染水を処理する過程で放射性物質を含む水が漏れ出すなどのトラブルが相次いでいて、東京電力の作業の管理のあり方に厳しい目が向けられています。

福島県では山積している難しい課題に向き合い、復興の歩みを着実に前進させていくことが求められています。

土屋復興相 “必要な財政支援に万全期す” 

土屋復興大臣は、東日本大震災から13年となるのにあわせて報道各社のインタビューに応じ、被災地の復興に向けて必要な財政支援に万全を期していく考えを示しました。

この中で土屋大臣は、被災地の現状に関し、東京電力福島第一原発廃炉に向けた処理水の海洋放出が引き続き課題になるとした上で「正確な根拠に基づく情報を出し続けていくことが大事だ。水産業者だけでなく、農業者などのためにも、処理水による風評が払拭(ふっしょく)できるよう頑張っていきたい」と述べました。

また福島県内になお残る「帰還困難区域」への対応をめぐり「希望する住民が1日でも早く帰還できるよう、除染やインフラ整備などをしっかり進めていきたい。将来的に『帰還困難区域』すべての避難指示を解除し、復興に責任を持つ決意には揺らぎがない」と強調しました。

さらに宮城、岩手両県の現状について「ハード面に関してはおおむね完了したとの意識はあるが、心のケアをはじめとしたソフト面は課題が残る。そうした状況を受け止め、支援していく」と述べました。

そして被災地の復興について「息の長い取り組みをしっかりと支援できるよう財源を確保する。必要な事業の実施に支障をきたさぬよう、万全を期していきたい」と述べました。

能登半島地震の被災地でも震災の教訓を

元日に起きた能登半島地震の被災地では、東北からも東日本大震災を経験した多くの人たちが支援活動に向かい、13年前の経験や教訓がさまざまなかたちで生かされました。

これからはインフラの復旧やなりわいの再生など能登の復興に向けても、東日本大震災の教訓を伝えていくことが求められています。