バブル経済崩壊以降、長らく低迷してきた日経平均株価がバブル期の最高値を超え、7日は一時、4万472円11銭をつけて取引時間中の史上最高値を更新した。終値は4万円台を割ったが、高値が続いている。
一方、物価高が続き、それに見合う賃上げは実現されていないのが現状だ。和歌山県内では「株価高騰の恩恵は届いていない」との声も聞かれる。(古賀愛子、平野真由、佐武建哉)
「生活が大変」
「企業の経費削減などでビジネス利用の客が減り、運賃の値上げもあって一般客も乗り控えしていると感じる。収入は減っている」
和歌山市内のホテル前で客待ちをしていたタクシー運転手の70歳代男性はこう語った。酒席の機会が減ったコロナ禍以降、夜間にあまり稼げなくなったとの愚痴を同僚から聞く機会が増えたといい、「株価が高騰しても、厳しい状況は変わらない」と嘆く。
湯浅町で飲食店を営む女性(69)は「原材料費が高止まりし、つらい」と話す。一部のメニューを50円値上げした際に客から厳しい声があったという。「物価を価格に反映できない中、どう経営していけばよいのか……」と悩む。 和歌山市内のアパレル店員の女性(66)は「賃金は変わらないのに物価は上がって、生活が大変。特にロシアのウクライナ侵略後は食費が1・5倍ほどになった印象だ」と話す。
地価依然低迷
バブル期には、別荘が「内見もなく、ファクス1枚で飛ぶように売れた」とされる白浜町でも、「株価高騰の実感はない」との声が漏れる。
町内の不動産会社代表(51)によると、コロナ禍だった近年は、テレワークの推進などの影響で、企業などがリゾートマンションや別荘を購入する「プチバブル」が起こったが、すでに平常に戻っているという。
「株高もピンとこない」といい、「バブルの頃は今後も株価がどんどん上がると思えたが、今はそういった希望が持ちにくい。海外勢や、国内の一握りの富裕層だけの話のように思える」と語った。
町内で不動産業を営む男性(75)は「バブルの頃は土地も建物もかなり高い値段で売れ、浮かれるくらいの景気だったが、今はどんなにいい土地でも当時の10分の1ほど」とため息をつく。
賃上げは不透明
株価の高水準が続いても、十分な賃上げにつながるかは不透明だ。 信用調査会社「東京商工リサーチ」和歌山支店によると、同社が行った賃上げに関する調査では、回答した県内32社のうち、2024年度に賃上げを実施予定とした企業は25社で約78%だった。
しかし、その賃上げ率では、日本労働組合総連合会(連合)が掲げる「5%以上」とした企業は1社だけ。また、25社のうち18社は年商5億円以上だった。損益を公表していた16社全てが黒字だったという。
賃上げを実施しないと回答した企業は、理由に「原材料価格・電気代・燃料費などが高騰しているため」「受注の先行きに不安があるため」などを挙げた。
乾健太支店長は「もともと体力があって経営体質が健全な企業しか、賃上げをする余裕がないのが実情だろう」と指摘する。
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