■認識違い
報告書が認定した99件のセクハラを含む不適切な言動のうち、最も多かったのは「頭をポンポンと触る」行為で、女性職員22人が被害を申告した。前町長は当初、「ねぎらいの気持ちだった」と弁明していたが、「不必要な身体接触行為で、性的な行動」と認定した。
報告書によると、頭を触る行為は2020年11月の町長就任直後から始まり、女性職員からハラスメント窓口の総務課に相談があった。顧問弁護士からセクハラに該当するとの見解を受け、当時の副町長らが注意したが、前町長は「誰が言ったんや」と犯人捜しをするような状況だった。副町長らは女性職員に危害が及ぶのを懸念し、「相談記録」を残さないことにした。
前町長は遅くとも21年春頃には再び不適切な行為を復活させていた。2月の記者会見でも副町長の注意について「笑い話で済んでしまった」と述べ、当初から認識の違いがあったことをうかがわせた。
■自衛を助言
21年4月には女性職員から尻を触られたとの相談があったが、「犯人捜しをする」などと考え、町幹部らは「嫌なことをはっきり伝える」「証拠を残す」などの自衛手段をアドバイスするにとどまった。その後も相談の度に同様の対応を繰り返し、「総務課による対応は事実上不能になっていた」(報告書)。
調査委の町職員(161人)への調査では、他の職員がセクハラ、パワハラに当たる行為を受けていると感じた職員は8割以上に上るなど二次被害が拡大。「前町長に適切に注意できる者がいない状況が常態化する中、各職員が個別対応を取らざるを得ない状況となっていた」とした。
■最後の手段
女性職員は録音などの記録を残し、録音機器を私的に複数購入して女性職員に渡す男性職員もいた。23年4月に秘書がセクハラに耐えられずに退職を決意。最後は他の被害者らが週刊誌に情報提供するに至った。
組織対応ができなかったことについて、傍島敬隆副町長は2月の記者会見で「我々にも責任がついて回る。反省するのみ」と述べた。
報告書は再発防止のため、〈1〉高潔な倫理観を持ち、ハラスメントに深い理解を持つ者による町政の実現〈2〉相談窓口の実効化(外部委託化など)〈3〉人事制度・就業環境の改善〈4〉条例の制定――など抜本的な組織の見直しを提言した。
◇ 町によると、前町長の退職金は1125万円。調査委の調査費用は1241万円に膨らみ、町は増加分を町議会に提案している。