学校現場にとって、子供の安全確保は最も重要な課題である。不慮の事故が起きた場合、原因を究明し、その情報を全国の学校で共有して、再発防止に生かすことが重要だ。
全国の小中高校では、2016~22年度に少なくとも456件の死亡事故が起き、その7割は国に報告されていなかった。学校での事故に見舞金などを支払う日本スポーツ振興センターのデータを読売新聞が分析して判明した。
文部科学省が16年に策定した指針は、学校や教育委員会に死亡事故を含む重大事故の報告を求めているが、徹底されていなかった。指針の趣旨が現場に十分浸透していなかったためとみられる。
自校で事故が起きたことを知られたくないという意識もあったのではないか。実態が把握できなければ、対策も立てようがない。
報告を怠った学校や教委はもちろん、これまで未報告の状態を改めてこなかった文科省も、危機意識を高めることが欠かせない。
文科省は今年度内にも指針を改定し、報告と調査の徹底を図るという。多忙な学校現場を混乱させぬよう、丁寧な説明と、わかりやすい運用に努めてもらいたい。
学校で、これほど多くの死亡事故が起きていたことに驚く。
サッカーのゴールポストが倒れて子供が下敷きになったり、プールへの飛び込みで頭を強く打ったりするケースは、各地で起きている。登下校中の交通事故や、校舎からの転落事故も多い。
ゴールポストはなぜ固定されていなかったのか。通学路の安全点検は適切に行われていたのか。転落事故は、いじめを苦にした自殺の可能性はないのか。
事故の教訓を生かし、少しでも悲劇をなくしたい。各学校は、事故が対岸の火事ではないことを十分に認識し、施設の安全性向上や指導の改善に生かしてほしい。
最近では、福岡県の小学校で、1年の男子児童が給食で提供されたウズラの卵を喉に詰まらせ、死亡する事故が起きた。リスクはあらゆるところに潜んでいる。
事故の捜査にあたる警察とも、できるだけ連携を深め、情報の共有を図るようにしたい。
事故防止には、施設の定期的な点検が欠かせない。ただ、金属の腐食などは素人の教員が見てもわからない部分がある。専門家の力を借りることも大切だ。
朝、元気に家を出た子供が、安全なはずの学校で事故に遭い、永遠の別れになる。そんな事態を一つでも減らさねばならない。