トランプ氏指名確実 「米国第一」再来に備えを毎日新聞(2024年3月7日『』-「社説」)

私邸「マララーゴ」で演説をするトランプ前大統領=米南部フロリダ州で2024年3月5日、AP

私邸「マララーゴ」で演説をするトランプ前大統領=米南部フロリダ州で2024年3月5日、AP

 米大統領選の共和党候補指名争いでトランプ前大統領の勝利が確実になった。15州で一斉に投票された「スーパーチューズデー」で圧勝し、対抗馬のヘイリー元国連大使を大きく引き離した。

 トランプ氏は早くも11月5日の本選に向け、「米国の歴史上、最も重要な日になる。この選挙に勝つ」と復権に自信を示した。

 本選は2020年に続いて民主党のバイデン大統領と対決する構図が濃厚だ。世論調査では勝敗を左右する激戦州でトランプ氏が優位を保っている。

 世界を混乱させたトランプ氏の「米国第一」主義の再来を見据え、それに備える必要がある。

 復権すれば、政策は以前にも増して過激になるとみられている。

 全輸入品に10%の関税をかけ、中国には法外な税率を課すことを検討している。その増収分を財源に富裕層などを対象にした減税を恒久化する方針という。

 ウクライナ支援や気候変動対策への拠出を削減し、「史上最大の送還作戦」と称する移民対策に振り向ける考えとされる。

 影響は内外ともに甚大だ。

 自由貿易を阻害し、米中対立を一段と激化させる。国産品で代替しようとすればコストが増大し、物価上昇を招くだろう。そうなれば自国の経済的な利益を損なう。

 世界的な課題に背を向け、内にこもる姿勢は、途上国などの反発を買い、同盟国との結束を揺るがす恐れがある。ひいては米国の安全保障を危うくしかねない。

 無謀に思える政策だが、それでも多くの人々がトランプ氏を支持し、復権を願うのはなぜか。

 根底には、世界の繁栄に貢献しながら、その見返りを受けられない現状への米国民の不満がある。

 国連を公共財ではなく無用の長物のように扱い、同盟国ネットワークを資産ではなく負担と捉える主張に共鳴する声は、党派を超えてある。

 再考を促すのは同盟国であっても容易ではないだろう。重要なのは、予想される混乱の拡大をいかに食い止めるかだ。

 自由経済や民主主義、国際ルールを重視する国々が、途上国を交えながら、秩序維持に向けて連携することが不可欠だ。日本も準備を怠ってはならない。