4年ぶりの減収減益、年初から4割前後も株価が下落(2024年4月29日『毎日新聞』-「余録」

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電気自動車(EV)革命をけん引してきたテスラだが、最近は販売不振で逆風に見舞われている。さいたま新都心ショールーム。手前が「モデルY」、奥右が「モデル3」=さいたま市大宮区で2024年4月19日、増田博樹撮影
 
 4年ぶりの減収減益、年初から4割前後も株価が下落、1万4000人の人員削減……。脱炭素化を追い風に電気自動車(EV)革命をけん引してきた米テスラが逆風に見舞われている
▲今年1~3月期の世界販売台数は前年同期を9%下回る38万台強と4年ぶりに減少した。販売てこ入れのため、米国など主力市場で大幅な値引きに踏み切ったことも裏目に出た。中古車が値崩れし、顧客離れに拍車がかかった
▲エンジン車に比べ高価なテスラ車の人気を支えてきた富裕層の需要が一巡し、低価格EVの開発が難航する。ガソリンでも走れ、割安感のあるハイブリッド車(HV)に顧客を奪われている
▲HVの元祖、トヨタ自動車は過去最高益で株価も高い。その好対照ぶりに、米個人投資家の間では「世界最高の自動車メーカーは、やはりトヨタ」との声も広がる
▲最近はテスラ車と同性能のEVを半値以下で売る中国の新興メーカーの攻勢も目立つ。それでもイーロン・マスク最高経営責任者は「テスラを車メーカーとして評価するのは間違い」と反論。人工知能(AI)を駆使した完全自動走行車を早期に実用化し「人の移動に革命をもたらす」と野心満々だ
▲斬新な商品を世に出し、当初は人気を博しても、価格面や使い勝手などで明確なメリットを提供できなければ、消費者に幅広く受け入れられず、市場の主流になれない。経営学の「キャズム(溝)理論」だ。強気で鳴らしてきたマスク氏も、本音では「溝」を感じているのだろうか。