たとえ意見の対立があっても、対話を続ける意思を双方が確認した意味は大きい。
昨秋に米サンフランシスコ近郊で行われた米中首脳会談以降、懸案だった国防当局間の対話が再開した。今月上旬にはイエレン財務長官が訪中するなど閣僚らの往来が続いている。
注目されるのは、習氏が前回に続いてブリンケン氏との会談に応じたことだ。関係の安定を望んでいることの表れと言える。
安全保障や経済の分野で対立している構図に変わりはない。王氏は「対話と協力が増えているものの、マイナス要因も積み上がっている」と指摘した。
台湾問題や南シナ海情勢を巡っては、両国の立場の違いが際立つ。周辺海域でにらみ合う米中両軍による偶発的な衝突を回避するには、誤解や誤算が生じないよう緊密な意思疎通が欠かせない。
ウクライナ戦争への対応でも温度差が目立った。ブリンケン氏は、中国が軍事転用可能な物資の輸出でロシアの防衛産業を支えているとの懸念を表明し、追加制裁の可能性を示唆した。中国は「正常な貿易」だと反発している。
中国はロシアやイランとの良好な関係を生かし、働きかけを強める必要がある。紛争の早期収拾に向け、米国と協力する余地もあるはずだ。
米議会では中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の利用禁止につながる法律が成立した。中国の電気自動車(EV)の過剰生産を問題視する米政府は、関税引き上げも辞さない構えを示している。
新たな火種が生じる中でも、習氏は会談で「対話を強化し、意見の相違をコントロールしながら協力を進めることは、国際社会の期待である」と述べた。
米中は世界の安定に責任を負っている。対話を継続し、国際秩序の立て直しに向けて建設的な役割を果たさなければならない。