490円の罪(2024年3月6日『山陽新聞』-「滴一滴」)

 コンビニのセルフ式コーヒーを利用したことのない読者のために少し説明を。レジで料金を払ってカップを受け取り、店内の機械に置いて自分でボタンを押すとコーヒーが出てくる

▼このコーヒーを巡って兵庫県の中学校の校長が1月、懲戒免職になった。レギュラーサイズ(110円)の料金で、ラージサイズ(180円)の量をついだ。店員に声をかけられ、本人が不正を認めたという

▼差額70円の不正を7回したといい、計490円の窃盗に当たる。不起訴となったものの代償は大きく、退職金もゼロに。この処分についてSNS(交流サイト)でひとしきり話題になった

▼国民は490円で職を失うのに、裏金3千万円の議員はおとがめなしか―。自民党派閥の裏金問題を引き合いに、不公平感を訴える投稿が相次いだ

▼派閥から議員へ還流された裏金が課税されないことにも、不公平だと訴える国民は多い。折しも所得税の確定申告シーズン。国民は細かい金額でも漏れがあると文句を言われるのに―。SNSでは「確定申告ボイコット」を呼びかける投稿が一時広がる事態になった

▼野党が求めるように、使途不明分は課税対象として納税すべきではないか。免職となった校長は子どもたちを失望させたが、その責任は取った。裏金議員の責任の取り方を有権者はしっかり見ておきたい。