給食の窒息事故 安全対策を徹底したい(2024年3月6日『北海道新聞』-「社説」)

 福岡県みやま市の小学校で、1年生の児童が給食を喉に詰まらせて死亡した。ウズラの卵によって窒息した可能性があるという。大変痛ましい事故だ。
 同様のことは過去にも起きている。原因を究明し、教訓にしなければ悲劇を繰り返しかねない。
 給食は子どもたちにとって楽しいひとときであり、健全な発達や食育にもつながる大切な時間だ。
 安全な食べ方の指導や万が一の時の応急処置など、事故の備えを徹底したい。子どもの命が不慮の事故で奪われることのないよう、周囲の大人の責任が求められる。
 市教委によると、児童は給食が始まった約5分後に異変を訴え、救急搬送先で死亡が確認された。
 給食の事故を巡っては2013年に札幌市の小学2年生がプラムの種を、15年には大阪市の小学1年生がウズラの卵をそれぞれ喉に詰まらせ死亡した。
 ウズラの卵は滑らかな球状で誤ってのみ込みやすい。今回の事故を受け給食からウズラの卵を一時除外する動きが各地で見られた。
 ただミニトマトなども似た性質を持つ。窒息の原因となりやすい食材は他にも水分の少ないパンなど多岐にわたる。栄養の偏りも懸念され、特定食材の除外では根本的な解決になるまい。
 給食時の危険性を多角的に取り除くことが肝要である。
 食事指導は大切だ。よくかんで汁物と交互に食べ、早食いはしないことなどを丁寧に伝えてほしい。詰まりやすい食材が出た場合は事前の注意喚起も求められる。
 そしゃくやのみ込む力には年齢や発達の程度により個人差がある。調理員の負担増に配慮しつつ、必要に応じて食べやすいサイズに切ることも選択肢となろう。
 消費者庁によると19年までの6年間に14歳以下の80人が食品による窒息で死亡した。5歳以下が9割を占めており豆類などが気管に詰まる誤嚥(ごえん)も多い。低年齢の子どもほど一層の注意を心掛けたい。
 食べ物を喉に詰まらせたら、速やかに119番すると同時に応急処置が重要になる。文部科学省などは具体的な方法を示している。
 前かがみにさせ肩甲骨の間を何度もたたく「背部こう打法」のほか、1歳以上なら後ろから両腕を回し、みぞおちの下で片方の手を握り拳にして上方に圧迫する「腹部突き上げ法」もあるという。
 対処が適切でなければ救える命も救えない。各学校は緊張感を共有し、消防署の研修を受けるなどして安全を確保してもらいたい。