愛媛の保育園 給食のりんご窒息事故で検証委員会が報告書(2024年3月25日『NHKニュース』)

去年、愛媛県新居浜市の保育園で、生後8か月の男の子が給食のりんごをのどに詰まらせて意識不明となった事故で、市の検証委員会は、りんごを離乳食とすることへのリスクの認識不足などが事故につながったとする報告書を市に提出しました。

去年5月、愛媛県新居浜市の「新居浜上部のぞみ保育園」で、生後8か月の男の子が給食で出された、小さくカットしたりんごをのどに詰まらせる事故があり、男の子は今も意識不明の状態が続いています。

この事故で、医師や弁護士でつくる市の検証委員会が原因や再発防止策の報告書をまとめ、25日に市に提出しました。

報告書によりますと、保育士が2かけらのりんごをスプーンで提供したあと、男の子が泣いて息を吸った瞬間に、りんごが気道を閉塞して窒息につながった可能性が高いとしています。

この保育園では、りんごを離乳食とする場合、加熱して提供するとした国のガイドラインが浸透しておらず、令和4年度にりんごを提供した42回のうち、加熱したのは2回だけだったということです。

また、事故前日に実施した保育士による家庭訪問で、男の子の保護者が離乳食について「家ではドロドロを食べている」と伝えたとしていますが、こうした情報は調理現場には伝えられていなかったということです。

さらに、園長や主任保育士も離乳食の調理方法を把握しておらず、園長は離乳食に異常がないかを確認する「検食」も実施していなかったということで、リスクへの認識不足があったとしています。

報告書では、事故直後の対応の問題点として、保育士が119番通報をした際、消防から指示された心臓マッサージが現場の混乱や保育士の動揺で実施されておらず、結果として、窒息事故の対応が取れていなかったとしています。

また、再発防止策として
▽保護者と離乳食に関する情報連携を確実に行うことや
救急救命講習を定期的に行い、さまざまな事故を想定したシミュレーションの訓練を実施することなどを提言しています。

検証委員会 “事故を風化させず再発防止策を” 

検証委員会の委員長をつとめる松山東雲短期大学岡田恵准教授は、「同じような事故を繰り返してはいけないという強い意志で議論を重ねました。市や保育施設には、事故を風化させることなく再発防止策に取り組んでほしい」と話していました。

また、新居浜市の石川勝行市長は「今回の検証結果を真摯(しんし)に受け止め、保育施設での研修や消防など関係機関との訓練などを進めて、二度と同じような事故が起きないように徹底していきたい」と述べました。

保育園 “あらゆる事故の防止策徹底を”

事故が起きた保育園を運営する社会福祉法人新居浜社会福祉事業協会」は、「重大事故を防止できなかったことについておわび申し上げます。報告書の内容を精査し、再発防止策を再度、検証したうえで、あらゆる事故の防止策の徹底につとめてまいります」とコメントしています。

男の子の両親 “悔しい気持ちが込み上げてきた” 

検証委員会の報告書について、男の子の両親はNHKの取材に対し、「心臓マッサージをしていれば結果が違っていたのではないかとか、なんとかならなかったのかと、悔しい気持ちが込み上げてきました。園の組織全体の問題で、起こるべくして起きた事故だと感じました。こうした事故を起こさないよう、行政や保育施設の人には、自分ごととして対策を考えてほしいです」と話していました。

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