フェーズフリー(2024年3月5日『秋田魁新報』-「北斗星」)

 元日に能登半島地震が発生し、さらに東日本大震災から13年となる「3・11」が近づいている。家庭の防災用品を見直してみたら、何年もそのままにしていて、消費期限切れの食品が出てきたという人もいるのではないか。災害への備えに継続して取り組むのは案外難しいことかもしれない

▼そんな中、注目されているのが平常時と非常時の垣根をなくす「フェーズフリー」という考え方だ。普段使うものを災害時にも役立てようという発想で、「備えない防災」とも言われている

▼例えば、水や日持ちするレトルト食品などを多めに購入しておいて、消費した分を買い足す。キャンプ用の寝袋やランタン、カセットこんろを災害時にすぐ使える場所に保管しておく。ビジネスの靴もなるべく歩きやすいものを選べば、走って避難するのに役立つというのもフェーズフリーの一つだ

能登半島地震では被害が甚大だったことに加え、帰省客が巻き込まれたことにより自治体の備蓄物資が不足した。さらに道路の寸断や半島という地形もあって、物資の輸送が遅れた

▼本県では冬の夜間に地震が起き約13万9千人が避難したとの想定で、3日分の備蓄を目指している。ただ、能登半島地震のように物資が必要としている人に直ちに届かない恐れもある。家庭の備えが重要だと改めて痛感する

▼「備えなければ」と気負うことなく、普段の暮らしの延長が防災につながるなら、無理なく備えができそうだ。一考に値するだろう。