厚生労働省の人口動態統計の速報値で、2023年の婚姻数が48万9281組となり、前年から約3万組、5・9%減った。50万組を割ったのは90年ぶりで、ピークだった1972年の約110万組の半数以下となった。出生数は過去最少の75万8631人で、前年から5・1%減った。
婚姻数と出生数には密接な相関関係がある。婚姻数の減少が続けば、少子化がさらに加速していくことが懸念される。
若年者の減少が婚姻数減少の一因だが、未婚化も背景にある。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、結婚意思のある未婚者に結婚していない理由を調査で尋ねている。2021年調査の25~34歳では「適当な相手にまだ巡り合わない」が男女とも40%を超えて最多。「必要性をまだ感じない」などが続いた。
結婚は個人の価値観に関わることであり、政府が支援に取り組む難しさはあるだろう。気になるのは、この質問への回答で経済的な理由を挙げた人が男性23・1%、女性13・4%だったことだ。非正規で働かざるを得なかったり、低収入から抜け出せなかったりといったことが考えられる。
安定した雇用と収入がなければ、相手がいて結婚の希望を持っていても踏み切りにくいだろう。こうした理由で結婚をためらう人が一定数いる状況は見過ごせない。
希望がかなえられる社会にしていくためにも、非正規労働者らの待遇改善は急務だ。賃上げの流れを大企業だけにとどまらせず、地方の中小企業などにも広げていくための政府の強い働きかけが求められる。
女性の社会進出が進む中、依然として幅広い年代で家事・育児の負担が女性に偏り続けていることも問題だ。社人研の調査では、一生結婚するつもりがない人の割合が上昇傾向にある。近年は女性でその傾向が顕著になっている。
識者の間には、旧態依然とした性別役割分担意識が、出産以前に女性の結婚意欲の低下につながっているとの見方がある。男女が社会と家庭での役割を等しく担う機運の醸成に向け、男性の育児休業取得促進や長時間労働の是正といった取り組みも欠かせない。
政府は少子化に歯止めをかけようと「次元の異なる少子化対策」を打ち出し、今国会に少子化対策関連法案を提出している。児童手当や育休給付の拡充などが柱。そうした子育ての支援策が必要なことはもちろんだが、既に子どもがいる世帯への経済的支援に力点を置くだけでは不十分だ。
政府は「これから6年程度が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」としている。結婚の意思がありながら諦めたり、見送ったりしている人たちを後押しする政策の充実を急がなくてはならない。