少子化に関する社説・コラム(2024年3月5日)

少子化(2024年3月5日『東奥日報』-「天地人」)

 韓国の少子化が日本以上に深刻だ。女性が生涯に産む子どもの数を示す2023年の合計特殊出生率が0.72と世界最低水準を更新した。日本の1.26(22年)に比べて著しく低い。生まれた赤ちゃんの数は約23万人で8年でほぼ半減した。

 住宅の価格高騰、雇用不安に伴う晩婚化、教育費の負担増などが要因に挙げられ、日本と通じるところがある。男性優位で保守的な社会構造が残る点でも似通っており、女性が結婚や出産をためらわずにすむよう、男女の不平等解消が必要だとされる。

 注目したいのは、韓国政府が取り組んできた少子化対策が必ずしも効果を上げていないことだ。06~21年に出産・育児支援などに約280兆ウォン、日本円で約31兆円を投じた。

 日本も岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」が議論されているが、婚姻数自体が減少していることへの対応を求める声がある。結婚はあくまで個人の自由だが、望んでも踏み切れない社会状況には手を打つ必要があろう。出生率低下で韓国と同じ道をたどることがないよう他山の石とすべきだ。

 先週末は、米大リーグ・ドジャース大谷翔平選手が結婚したというビッグニュースに沸いた。29歳。結婚に向け背中を押される若者がいるかもしれない。とはいえ今多くの若者が求めるのは安定した将来を描ける希望であり、まずは賃金アップだろう。

 

(2024年3月5日『しんぶん赤旗』-「潮流」)

 子どもをもつ以外の人生を歩みたい―。その選択を、テレビの長寿番組で全国に伝えた夫婦は、とんでもない試練にさらされました

▼教師だった妻は夫の親からなじられ職も解かれる。夫婦は殺害予告をうけ、隣人は手紙を送りつけました。「あなたは女性と名乗るべきではない」。1970年代のアメリカでの出来事です

▼子を産むか産まないか。両者の間の「溝」を掘り続けてきたものとは。米国の歴史学者が著した『それでも母親になるべきですか』を読むと、その「溝」が社会のなかで意図的につくられてきたことがわかります。国家や宗教によって

▼著者は歴史をひもときながら、女性が母親にならなかった理由を説きます。助けてくれる人がいなかった、すべてを手に入れるのは無理、地球環境が心配、物理的に無理だから…。そして現代の女性が子どもをもたない理由の多くが、過去の女性たちと共通していることも

▼昨年の日本の出生数が75万人余で過去最少を更新しました。これで8年連続の減少。結婚も減っていることから、専門家は「今後さらに減少する可能性がある」と指摘します。民間の調査でも将来子どもをほしくないと答えた未婚の男女が半数超に

▼異次元の少子化対策を口にする岸田政権ですが、中身は低次元で財源を国民に押しつけるお粗末さ。若い世代が先が見えない状況に置かれている今、隅々までの支援を。めざすのは、どんな生き方を選択しても自分らしく生きることができ、それが尊重される社会です。