政治資金パーティーは驚きの利益率 宮城の国会議員の収支報告書を調べて浮かんだ政治とカネの実態(2024年3月5日『河北新報』)

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国会議事堂

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で「政治とカネ」の問題が再燃し、再発防止策を巡って国会の与野党攻防が激化している。宮城県関係国会議員の政治団体総務省や県選管に提出した2022年分の政治資金収支報告書を調べると、派閥からの資金提供や政治資金パーティー、企業・団体献金の実態に加え、不透明な使途も浮かび上がる。自浄能力は期待できるのか、確定申告に追われる有権者は注視している。

<派閥からの資金提供>裏金事件で還流発覚

 安倍派から土井亨氏(衆院1区)が100万円、西村明宏氏(衆院3区)が50万円を受領。小野寺五典氏(衆院旧6区)は岸田派からの10万円を報告した。伊藤信太郎氏(衆院旧4区)は麻生派からの230万円、秋葉賢也氏(衆院比例東北)は茂木派からの100万円を記載した。

 安倍派がパーティー券販売ノルマの超過分を所属議員にキックバック(還流)していたことが裏金事件で発覚。西村氏は106万円分の不記載があったとして今年1月31日、報告書の修正を総務省に届け出た。

<企業・団体献金>政党支部に抜け道残る

 政財界の癒着が明るみに出たリクルート事件やゼネコン汚職などを背景に制限が強化されたが、政治家が代表を務める政党支部には献金できるため抜け道が残る。

 伊藤氏を除く自民の6人と立憲民主党安住淳氏(衆院旧5区)が代表を務める政党支部に記載があった。最多は秋葉氏の639万円。

政治資金パーティー>利益率80%6人超える

 チケットは2万円が相場。企業・団体も購入できるほか、1回20万円以下であれば報告書への記載が不要で、企業・団体献金の隠れみのの性質も帯びる。

 9人がパーティーを開き、うち6人の利益率が80%を超えた。最高は秋葉氏の89%。

 開催費用を差し引いた収益額は小野寺氏の2386万円、自民の和田政宗氏(参院比例)の1868万円、安住氏の1698万円の順。

<不透明な使途>疑念拭えぬ事務所費

 身内への政治資金還流の疑念が拭えない事務所費の計上も依然として確認された。秋葉氏側は仙台市泉区にある地元事務所の家賃代として母親に60万円、妻に60万円をそれぞれ支出した。

 同様の手法で11~20年、妻と母親に計1414万円を支払い、母親は確定申告していなかった事実が22年秋の臨時国会で表面化。秋葉氏は同12月、復興相の辞任に追い込まれた。

 一方、安住氏側は石巻市にある自宅兼事務所の家賃について、計150万円を本人からの無償提供分と記載し、同額を事務所費に計上。実質的な金のやりとりはなく、秋葉氏側と対照的な処理をしている。

 秋葉氏は、義兄が代表で活動事態が不明な政治団体「政治経済研究所」(東京)に17年、600万円を寄付していたことも野党の追及を受けた。22年の報告書では19年に解散した際の残金312万円を「返金」名目で、秋葉氏が代表を務める政党支部の「その他の収入」に計上した。

<集金力>首位は桜井充氏8292万円 平均3163万円

 政治資金収支報告書によると、県関係国会議員13人の2022年の「集金力」は表の通り。自民党桜井充氏(参院宮城選挙区)が8292万円でトップ。22年の改選を前に無所属から自民入りして党本部から交付金を受け取り、前年の2・6倍に急増した。

 議員1人当たりの平均は3163万円で、前年より6・4%減少。このうち21年の衆院選で再選された衆院議員8人の平均は2922万円で、前年を31・1%下回った。

 桜井氏は政治資金パーティーを6回開き、1931万円の収入を得た。党本部からの交付金は3600万円で、他の自民議員に比べて2200万~2300万円多い。7月の参院選を踏まえた配分とみられる。

 2位は自民の和田政宗氏(参院比例)の4437万円(前年比3・3%増)、3位は自民の小野寺五典氏(衆院旧6区)の4421万円(24・1%減)。主な政党別の平均は自民(7人)が4159万円、立憲民主党(4人)が2232万円。

 22年は新型コロナウイルスの流行が3年目となり、政治資金パーティーは前年より1人多い9人が開催。総件数も前年の21件から47件に大幅に増えた。

 集金力は総務省と県選管が23年11月に公表した政治資金収支報告書のうち「国会議員関係政治団体」の22年収入総額を合計。前年からの繰越額を除いた上で、自身の団体間で移動した資金を差し引いて算出した。