相次ぐ雪崩事故 事前準備と慎重行動を(2024年3月5日『北海道新聞』-「社説」)

 冬山に入った人たちが雪崩に巻き込まれる事故が相次いだ。
 宗谷管内利尻富士町利尻山でツアー客が死亡した。ガイドが脚の骨を折るけがをし、他にも軽傷の人たちが出た。
 後志管内島牧村の東狩場山では、スノーモービルで走行していた人が死亡した。
 現場はスキー場と違って管理されていない大自然の中だ。春先は天候の急変や寒暖差で、雪崩の危険性が高い。
 道警は、利尻山の事故について安全管理に問題がなかったか、業務上過失致死傷の疑いも視野に調べている。
 経緯や事故原因を明らかにし、再発防止につなげねばならない。
 島牧村には事故当時、雪崩注意報が発令されていた。利尻島は事故の日の朝まで出ていた。
 専門家は、2月中旬の気温上昇で解けた雪が再凍結し、その上に積もった雪が滑り落ちる表層雪崩が起きた可能性を指摘している。
 全道的に雪崩が起きやすい状況だったのではないか。
 自然の雪山で楽しむスキーやスノーボードバックカントリーと呼ばれ、爽快感が魅力だ。北海道の新雪は特に人気が高い。
 しかし、遭難が毎年のように発生している。昨年1月には羊蹄山でスキー中だったグループのドイツ人が雪崩で死亡した。
 入山に際しては、事前に地形や気象、積雪の状況などをよく調べ、現地をよく知る人に同行を頼んだり意見を聞く必要がある。
 少しでも危険が予想されるのなら中止をためらってはならない。
 登山計画書を出し、万が一、雪に埋まっても居場所を知らせる電波送受信機などの安全装備を用意することも重要になる。
 十分に備えても予期せぬ危険に見舞われる恐れがあるのが冬山だと自覚し、現地では慎重な行動に徹することが欠かせない。
 コロナ下の行動規制が解かれ、北海道の雪に憧れ国内外から訪れる人は続くとみられる。
 バックカントリーが目的の来訪者が多い山がある自治体、警察、宿泊施設などは連携して気象や山の特徴などを細かく発信し、遭難の防止に努めてもらいたい。
 同じくバックカントリーでの遭難事故が多い長野県はルールのあり方や啓発方法の検討を続けている。最近は外国人客に注意を呼び掛ける動画を作成したという。
 遠来の客に北海道の大自然を安全に楽しんでもらうために、道も研究してはどうか。