オスプレイ飛行再開へ 住民の安全脅かす暴挙だ(2024年3月4日『琉球新報』-「社説」)

 昨年11月に鹿児島県・屋久島沖で墜落し、全世界で飛行停止となっている米軍の輸送機オスプレイを巡り、AP通信は米国防総省が近く飛行停止措置を解除する見通しであると報じた。

 米軍側は事故発生時の「機器故障」を特定したと発表したが、詳細は不明で、安全性にはなお強い懸念が残る。飛行再開は容認できない。
 屋久島沖の墜落事故で、米空軍のCV22オスプレイの乗員8人全員が死亡した。この事故ではエンジン部から火を噴く様子も目撃されている。
 事故原因について、米NBCニュースは「ギアボックスに関わる事故の可能性」を伝えている。
 ギアボックスに関連する不具合は、これまでも確認されている。2022年6月に米海兵隊のMV22オスプレイが米カリフォルニア州で墜落し5人が亡くなった事故では、米海兵隊はエンジンとプロップローター(回転翼部分)をつなぐクラッチの作動不良が原因と説明している。
 同年8月には、事故につながる可能性がある不具合があるとして、米空軍は全てのCV22オスプレイの飛行を一時停止した。エンジンとプロペラのローターをつなぐクラッチが何らかの原因でかみ合わなくなる不具合が、17年以降に4件起きたことなどが理由だ。クラッチもギアボックス内にある。陸上自衛隊オスプレイが23年8月に静岡県航空自衛隊静浜基地緊急着陸した際も、ギアボックス内に金属片ができたのが原因だった。
 海兵隊仕様のMVも空軍仕様のCVも構造としてはほぼ同型であり、それぞれでギアボックスに関連する不具合が頻発している以上、オスプレイの機体に重大な欠陥があると言わざるを得ない。
 米国防総省は飛行再開に際し、追加の安全対策を施すとしているが、屋久島沖の事故原因の詳細を明らかにしない以上、対策の効果すら検証できず、根本的な欠陥が解消されたのかも見えないままだ。
 オスプレイは12年の普天間飛行場配備後、18年には東京の米軍横田基地にCV22が配備、陸上自衛隊も20年から導入している。市街地を含め県内各地の上空を飛行するほか、増加する日米共同訓練などにより全国でオスプレイが飛行している。屋久島沖の墜落も、横田基地のCV22が嘉手納基地に向かう途中の事故だった。
 欠陥を抱えた機体の飛行は、乗員だけでなく周辺住民の安全を脅かす暴挙だ。16年にオスプレイが墜落した名護市安部の海岸は、集落からわずか800メートルだった。
 飛行再開にあたって、米軍幹部が日本を訪れ、防衛省に解除に向けた計画を説明するという。政府はどのような対応を取るのか。再開計画に何の異論も唱えず、追随するだけでは、沖縄や日本国民の安全をないがしろにするものだと認識すべきだ。