自転車に青切符/事故防止の意識高めたい(2024年2月28日『神戸新聞』-「社説」)

 自転車による悪質、危険な走行を効率的に取り締まるため、警察庁は交通反則切符(青切符)を交付し反則金を科す制度を導入する方針を固めた。今国会で道路交通法改正案の提出を目指す。利用者が法令を順守し重大事故を防ぐ契機としたい。

 現行の制度では、軽微な違反の場合は罰則のない指導警告票の交付にとどめ、悪質性の高い違反を刑事処分の対象となる交通切符(赤切符)の交付で処理している。しかし、赤切符は起訴を見据えた捜査が必要なために処理時間が40~50分と長くかかり、違反者、警察ともに負担が大きかった。

 青切符反則金を納付すれば起訴されず、捜査の必要もなく短時間で処理できる。導入により事故防止の実効性を高め、安全な交通環境の整備につなげる狙いがある。


 対象は16歳以上を想定している。ミニバイクの免許が取得できるようになり、歩行者との衝突事故の増加が見込まれる電動キックボードの運転も可能なことを考慮した。

 青切符は約115種類の違反を対象とする。信号無視や遮断機が下りた踏切への立ち入り、走行中の携帯電話使用(ながら運転)などは重点的に取り締まる。実際に青切符を切るのは、何度も繰り返すなど悪質性が高いケースに絞り、反則金は5千~1万2千円程度を見込む。

 また酒気帯び運転に対する罰則を新設し、飲酒運転とともに赤切符の交付対象とし、厳しく対応する。

 交通事故は近年、全国的に減少しているが、昨年の死者数は2678人と8年ぶりに増加した。自転車が関係する死亡事故は減少幅が緩やかで、7~8割は自転車側の過失が原因とされる。兵庫県内では一時不停止による歩行者相手の事故が多く、対策が急務となっている。

 青切符を導入する目的は事故防止にある。恣意(しい)的な取り締まりととられないよう、警察と行政が連携し、運用の指針や該当する行為を明確にし、丁寧に周知する必要がある。

 中高生が加害者になる例も少なくなく、対象外の15歳以下への交通安全教育の充実も欠かせない。ルールを理解してもらうには、学校や地域などでの取り組みが重要だ。

 昨年4月からヘルメット着用が全ての年齢で努力義務となったが、着用率は10%台と低迷している。高齢になるとバランスを崩して転倒し、頭に大けがをするリスクが高まる。正しい乗り方は自転車を利用している本人の身を守ることになる。


 ドライバーの協力も不可欠だ。自転車の走行を妨げないよう、禁止区域での駐停車は避けねばならない。自転車専用レーンの拡充など安全に走れる環境づくりも急ぐべきだ。