【震災13年 除染土再生利用】「政治主導」の具現化を(2024年3月2日『福島民報』-「論説」)

 自民党東日本大震災復興加速化本部は、東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌の再生利用を政治主導で進めるよう第12次提言案に盛り込んだ。岸田文雄首相は重く受け止め、技術確立と国民の理解醸成に総力を挙げて取り組む必要がある。

 法律で明記した「2045年までの県外最終処分」を実現するには、除染で発生した土壌の減容化や再生利用による最終処分量の削減が不可欠とされる。一方で、環境省が県外で計画した再生利用の実証事業は住民らの反対を受けて頓挫している。政治の力で打開すべきとの要請は、一向に進展しない現状への危機感の表れに他ならない。

 提言案では、法律で約束された期限までに残された時間は長くないと前置きし、再生利用に向けた取り組みを「個々の省庁で前に進めるのは困難」と指摘した。その上で、関係省庁が連携するなど政府一丸で対応する必要性を強調した。岸田首相は体制を早期に構築し、課題解決へ動き出すべきだ。

 福島第1原発処理水の海洋放出の経験を踏まえた対応も求めている。環境省のアンケートで、県外最終処分が法律で定められていると知っているのは県民が58・1%だったのに対し、県外は25・4%にとどまる。処理水を巡っては安全性への理解が思うように進まなかった経緯がある。どこに問題があったのかをしっかりと検証し、県外最終処分に向けた周知活動に生かしてもらいたい。

 除染土壌の安全性などを評価する国際原子力機関IAEA)の報告書が今後公表される。処理水放出と同様、国際的権威のある第三者機関の「お墨付き」を得られるかどうかが注目される。住民とのコミュニケーションや情報発信の在り方にも言及するとみられ、大いに役立てたい。

 政治主導をかけ声だけで終わらせないためには、国会議員一人一人が自分事として問題意識を持つことが大切だ。議員同士で検討組織を設けるなど具体的な活動も欠かせないのではないか。まずは中間貯蔵施設を視察するなど、自ら理解を深める努力が求められる。県も国任せにすることなく、地元の意見をはっきりと主張し、政府と渡り合う政治力と交渉力を持たねばならないだろう。(角田守良)