ふるさとの引力(2024年3月1日『山陰中央新報』-「明窓」)

2024年卒予定の大学生らを対象にした、新卒採用の合同企業説明会に訪れた学生たち=23年3月1日、東京都江東区


 先日、家族で少し遠出して山口県周南市に出掛けた。徳山動物園でゾウを見た後、立ち寄った商業施設で一枚のポスターに目が留まった

▼<地方都市に生まれた。じぶんにとっては、真ん中だった街。地方と意識したのはいくつのときからだったのか>。読み進めると、地方の古里で働くという選択肢を投げかける山口地盤の企業のブランディング広告だと分かる

▼カレンダーが春色に変わり、きょうから3月。大学3年生らを対象とした会社説明会が解禁日を迎えた。就職活動が本格的にスタートし、古里の山陰で就職しようかどうか悩んでいる学生もいることだろう。島根県内は高校生の半数以上が県外に進学し、このうち卒業後に県内で就職する人は約3割にとどまるという。古里に戻る選択は少数派で、採用難に悩む企業は多い

▼これから古里を離れる若者たちも大勢いる。きょうは多くの高校で卒業式がある。新しい世界に飛び込み、慣れない環境に身を置いて初めて、地方や古里を意識することもあろう。その時に何となくでも将来戻りたい場所と思ってもらえるだろうか

周南市出身で、童謡『ぞうさん』『一年生になったら』の作詞で知られる詩人まど・みちおさんの著書にこんな言葉を見つけた。<私にとってのふるさとは、はるかな地球の中心の方、引力の方向なんです

 

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