特攻作戦(2024年3月1日『秋田魁新報』-「北斗星」)

 太平洋戦争末期、日本は飛行機ごと敵艦に体当たりする特攻作戦を行った。鹿児島県の知覧(ちらん)飛行場からは400人を超える若者が出撃して命を落とした

▼現在、飛行場跡地の一角に立つ知覧特攻平和会館は特攻隊員の資料や写真などを通して平和や命の尊さを伝える。作家の汐見夏衛さんは子どもの頃に会館を訪問。特攻隊の歴史に触れ、不条理さに衝撃を受けたそうだ

▼戦争の記憶を風化させてはならないとの思いが強まり、2016年に小説「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を出版した。現代から1945年にタイムスリップした少女と、巡り合った特攻隊員の恋愛を糸口に戦争の一面を描いた作品。読むとやりきれない思いが募る。若い世代を中心に反響を呼び、この小説を原作とした同名映画が昨年12月に上映されるとたちまち話題となった

▼監督の成田洋一さん(秋田市出身)は小説から戦争への怒りを感じ取ったという。その思いをくみ、何げない日常が奪われていく様子をリアルに表現した

▼実世界ではロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの戦闘が続く。砲撃で犠牲となったり、住居を失ったり。嘆き悲しむ人たちの姿が連日のように報じられる。映画館では多くの人が涙を流していた。実世界と重ねて見た人もいたかもしれない

▼鑑賞後に知覧特攻平和会館を訪れ、特攻の史実に胸を痛めた人もいるという。汐見さんや成田さんの不戦・反戦の思いは確かに届いているはずだ。

 

解説

SNSを中心に話題を集めた汐見夏衛の同名ベストセラー小説を映画化し、戦時中の日本にタイムスリップした現代の女子高生と特攻隊員の青年の切ない恋の行方を描いたラブストーリー。

親にも学校にも不満を抱える高校生の百合は、進路をめぐって母親とケンカになり、家を飛び出して近所の防空壕跡で一夜を過ごす。翌朝、百合が目を覚ますと、そこは1945年6月の日本だった。通りがかりの青年・彰に助けられ、軍の指定食堂に連れて行かれた百合は、そこで女将のツルや勤労学生の千代、彰と同じ隊の石丸、板倉、寺岡、加藤らと出会う。彰の誠実さや優しさにひかれていく百合だったが、彼は特攻隊員で、間もなく命懸けで出撃する運命にあった。

NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の福原遥が百合役、「死刑にいたる病」の水上恒司が彰役で主演を務める。「光を追いかけて」の成田洋一が監督を務め、福山雅治が主題歌を担当( 映画.com)。

2023年製作/127分/G/日本
配給:松竹
劇場公開日:2023年12月8日

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