就活にAI(2024年2月25日『熊本日日新聞』-「新生面」)

 最寄りのスーパーのレジ周りが様変わりして、かなりの月日がたった。商品のバーコードの読み取りは店員さんがやってくれるが、支払いは客が機械で。「セミセルフ」と呼ばれる方式だ。釣り銭を手渡す手間などを省けるため、かなりの業務効率化になるらしい

▼当初は店と客の双方がまごついていたが、徐々に慣れていった。レジ前の行列も最近は短くなったような。ただ、顔なじみの店員さんがいつの間にか減ってしまい、少し寂しさも覚える

▼こうした機械化や自動化の流れは、社会のさまざまなところで加速している。先日の本紙には、新卒の学生を採用している企業の7割が、就職活動で生成人工知能(AI)を利用している学生を肯定的に受け止めている、との記事があった。自社をPRする文章や募集要項の作成に生成AIを使う企業も増えているようだ

▼思わぬ弊害もある。東北地方のある新聞社は、入社を希望する学生に求めていた作文の事前提出を今年から取りやめた。理由の一つは、「本人が書いた作文かどうか判別が難しいから」

▼生成AIは今後さらに就職活動の必需品となっていくのだろう。募集から採用まで、就活の全てをAIが取り仕切る日もそう遠くないかも。けれど、それは望ましい未来なのかどうか

▼くだんのスーパーでは、機械操作に苦戦しているお年寄りに店員さんが寄り添い、丁寧に説明している姿も見かける。自動化によってそうした目配りや気遣いが増えていくのならば、未来も捨てたものではないが。