能登地震、在宅避難 取りこぼさない支援体制を(2024年2月29日『河北新報』-「社説」)

 取り残されがちな被災者の状況を丁寧に把握する必要がある。一人一人がこぼれ落ちない支援体制が求められる。

 能登半島地震はあすで発生から2カ月となる。山積する課題の中で今後、留意したいのが、自治体指定の避難所ではなく、損壊した自宅などで難をしのぐ「在宅避難者」や「在宅被災者」への支援だ。

 自治体が健康状態やニーズを確認できず、支援が行き届かない結果、災害関連死につながる恐れもある。自治体は被災者の所在確認など基本的なデータを共有できる仕組みを早急に整え、主導的にフォローしてほしい。

 2カ月を経て今なお、車中泊をしたり、壊れた自宅で暮らしたりしている被災者がいる。避難所の収容人員不足などのため、自宅のほか、倉庫やビニールハウスなどで避難生活を送ってきた人は少なくない。避難所生活にストレスを感じ、安全性が懸念される自宅に戻った被災者や、介護が必要な家族のために自宅にとどまる人も見られる。

 石川県は避難所以外に避難している被災者向けの専用窓口を設け、登録を呼びかけている。県によると、27日時点で把握しているのは親戚宅などが7231人、自宅が4557人、車中泊が141人。登録者数は日々、増え続けている。

 2013年に改正された災害対策基本法は、避難所以外に滞在する避難者に対し、自治体が生活物資の提供に努めるよう定めている。だが、在宅避難者は状況を把握しづらく、物資や情報も届きにくい。ともすれば、支援は後回しにされがちだ。

 内閣府によると、東日本大震災では、岩手県で最大約2万4000人が自宅に寝泊まりしながら、避難所に通って食事などの支援を受けた。宮城県では支援の枠組みから漏れ、10年近くたっても生活が再建できない在宅被災者の存在がクローズアップされた。

 石巻市が在宅被災者の問題を捉え、最大76万円を助成する補助金制度をつくったのは震災から7年後の18年度だった。補助金の利用は18、19年度で868件。少なくともそれだけの世帯が震災後、自宅を修繕できずに生活していたことになる。

 16年の熊本地震では、自宅での避難が50%超に上ったとのデータがある。そうした在宅被災者への支援不足という教訓から生まれたのが、一人一人に寄り添う「災害ケースマネジメント」だ。

 自治体が弁護士や保健師らと連携して個別訪問し、被災者から悩みや課題を聴き、公的な支援や民間のサポートにつなげる。伴走型の支援で自立や生活再建を実現させる制度だ。

 さまざまな困難に直面した被災者がどこにいて、何を必要としているのか。実情に沿ったきめ細かな支援を切れ目なく継続できるよう、支援体制の再構築が不可欠だろう。