発生から7週間が過ぎた被災地で、なお多くの人が避難所に身を寄せている。季節外れの暖かさとなる日もあったが、寒さが戻り、被災者の疲労感に追い打ちをかけていないだろうか。
冬の避難生活は、命の問題に直結する。被災地に限らず、自治体はリスクを再確認し、改めて対策を講じてもらいたい。
元日に発生した能登半島地震では、凍死や低体温症で命を落とした人が30人以上に上り、厳しい寒さの中で送る避難生活の過酷さが顕著となった。
避難所に灯油ストーブなどがあっても備蓄していた灯油が尽きたり、エアコンが壊れて使えなかったりする事態が起きた。
壊れた自宅から暖房器具や布団を取り出して避難所に運んだ人や、傾いた自宅で余震におびえながら過ごした人がいた。
孤立した集落で住民が灯油を持ち寄り、救助されるまでなんとかしのいだ地域もあった。
いずれも低体温症や体調悪化、余震による二次被害のリスクと隣り合わせの避難といえる。
やはり寒い季節に起きた1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災では、寒さなどで体調を崩して亡くなる災害関連死が相次いだ。冬の避難所対策が問われてきた。
避難の課題を洗い出すには、避難所の運営訓練が有効だ。
しかし日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震で津波被害が想定される北海道から千葉県までの108市町村で、冬に訓練をしたことがない自治体が7割に上ることが、共同通信社の調査で判明した。
実施しないのは、高齢者が多いことや、参加者が体調を崩す恐れがあることなどが理由だ。
冬の避難に備え、多くの自治体が毛布や灯油ストーブの備蓄に努めている。しかし能登半島地震では帰省中の人が多く、備蓄品がすぐになくなる避難所もあった。
現状の備えで十分かどうか、厳しい条件を想定した訓練で、課題を見つけてもらいたい。
障害者の中には避難所に滞在しづらいという人もいる。そうした人たちを地域で支える方法についても知恵を出し合いたい。
避難する側も自治体任せであってはならない。非常用持ち出し袋を衣替えのタイミングに合わせて見直し、冬季は上着やカイロを加えるなど、暖房が使えない場合への備えが必要だ。
日本海側沿岸の地震は津波の到達が早い。今回の地震で新潟市では、住民が逃げ込む先として指定された学校などの緊急避難場所で解錠の在り方が課題となった。
鍵の管理者が駆けつけられない場合でも迷わないように、解錠の手段や基準を地域住民が共有する取り組みを急がねばならない。