「過度な飲酒」(2024年2月28日『東奥日報』-「天地人」)

 二十数年前、県警で変死体取り扱い状況を取材していた際、刑事がぽつりと語った。いわゆる孤独死の現場となった居宅や居室を調べると「空になった焼酎の大容量ペットボトルを何本も見掛けることが多い」というのだ。

 亡くなった人が生前、黙々と酒杯をあおっていたであろう光景は容易に想像できる。過度な飲酒が直接的な死因と推定されるケースもあったはず。そうでなくとも、積み重ねた酒量が体をむしばんだ可能性は否定できまい。

 飲酒による健康面へのリスクについて厚生労働省が初のガイドラインをまとめた。生活習慣病のリスクを高める純アルコール量を男性が1日当たり40グラム以上、女性20グラム以上と明示した。大腸がんは1日20グラム以上で、高血圧は少量でもリスクが高まるとする。

 純アルコール量20グラムは、ビールであれば中瓶やロング缶1本、日本酒は1合、ワインがグラス2杯弱に相当する。左党ならば居酒屋でお通しを食べた時点で超過する基準かもしれない。県の調査では2021年度、県民男性の32%、女性の20%が生活習慣病のリスクを高める量を飲酒しているという。

 病的あるいは大量に飲酒するのはもちろん論外だが、リスクを理解した上で適量を楽しむも良し、健康を考えて節酒に励む、断酒するもまた良しであろう。ガイドラインが問うているのは、酒との付き合い方を巡る「自分らしさ」だ。

健康に配慮した飲酒に関するガイドライン[266KB]別ウィンドウで開く