女性側と伊東側、双方の刑事告訴は受理されたものの、実際に刑事事件になるかは未だ不透明だ。
「日本のイナズマ」に突如浮上した今回の騒動は、なぜ起きたのか。当事者らへの取材から背景を探る。
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にしわき・きょうすけ/'70年、千葉県生まれ。東大法学部在学中に司法試験に合格し、'95年、アナウンサーとしてテレビ朝日に入社。'07年に法務部へ異動し、'23年7月に法務部長に就任。同年11月にテレビ朝日を退社し、「西脇亨輔法律事務所」を開業した ----------
報じられてきた話とはまったく違っていた
「ごめん、一回全部、細かく、教えてくれ」 その録音の中で男性は一言ひとことを区切り、力を込めて質問している。
「あーそうですね」 答える女性の声は明るく落ち着いている。そしてあの夜、何があったかを話し始めた。声の主とされているのは伊東純也選手を刑事告訴した2人の女性のうちの一人。その言葉は、これまで報じられてきた話とはまったく違っていた―。
サッカー日本代表・伊東純也選手(30歳)の性加害疑惑を週刊新潮が報じてから、半月以上が過ぎた。
2月1日発売の同誌は、昨年6月21日未明、大阪市内のホテルで伊東選手と男性トレーナーが、泥酔して意識がない2人の女性、AさんとBさんに性行為をし「準強制性交等罪」で刑事告訴されたと報じた。これに対して伊東選手側は女性たちを虚偽告訴罪で「逆告訴」し、双方の主張は真っ向から対立。その影響はサッカー日本代表にも及び、議論が過熱している。
伊東選手は前回W杯のスペイン戦で同点弾をアシストするなど日本代表の主軸の一人だが、新潮報道を受け、2月3日のアジア杯準々決勝では代表を離脱、日本は敗退した。次の代表戦は3月21日のW杯アジア予選、相手は北朝鮮だ。
伊東選手が代表に復帰できるかに注目が集まっているが、そうした中、事件のカギを握る人々が口を開き始めた。
これはでっち上げです!」
目に涙をにじませながら開口一番そう語ったのはX氏。当時伊東選手のマネジメントをしていて、問題の夜も事件直前まで行動をともにしていた人物だ。当初は口を閉ざしていたが、このまま事態を長引かせてはならないと決意し、取材に応じた。
「週刊新潮の記事には、女性が伊東選手の部屋の中で一升瓶の日本酒など大量のお酒を飲まされ意識を失ったと書かれていますが、ウソです。あの部屋に持ち込んだのは缶チューハイなどが数本と芋焼酎の小さなボトル1本だけでした。一升瓶などありません」(X氏)
そのことを裏付ける証拠もあると、伊東選手側の加藤博太郎弁護士は主張する。その夜コンビニで酒などを買った代金の明細だ。問題の夜に伊東選手の部屋で飲んでいたのはX氏の他に伊東選手、男性トレーナー、そして2人の女性の計5人。その酒代の合計は、おつまみ込みで「4387円」だった。
「一人当たりの酒の量は缶チューハイを1~2本くらい。焼酎は、女性は苦手だと言って、飲んでいなかった」(X氏) その後、X氏は早々に中座して自室に引き上げ、翌朝、テレビ番組の撮影のために伊東選手を迎えに行った。そのとき、部屋で何を見たのか。
「女性2人は寝ていて、部屋に入るときにすでに着ていた部屋着などを着ていました。裸ではありません」(X氏) そしてX氏はあるいきさつを強調した。
「女性側はこの日の直後に被害を訴えたと言っているようですが、そうではありません。事件があった昨年6月の時点では女性は朝まで部屋にいたことを謝っていました。それが昨年9月になって突然、性被害に遭ったとして賠償金などを求めてきたのです」
前出の加藤弁護士もここに事件の謎を解くカギがあると主張する。
「女性の説明が、事件直後から二転三転しているんです」
音声に残された会話
週刊新潮は、性被害を訴えているAさん、Bさんという2人の女性が当時の記憶について次のように話したと報じている。
まずAさんは「性被害を受けている間の意識がほとんどなかったのですが、なにが起きたのかをBちゃんに聞かされて愕然となりました」。一方のBさんは、自分自身については「性行為中の記憶はないが、性行為をされた後のような感触があった」、そしてAさんについては「隣のベッドでAちゃんが伊東さんに犯されているのはわかりました」と説明したという。
つまり女性側の話によれば、実際に事件を目撃などしているのはBさんだけだ。そのため捜査のカギを握るのもBさんの証言ということになる。
ところがこのBさんが事件後にはまったく違うことを話していたと、伊東選手側は主張しているのだ。
そしてこの主張を裏付けるかもしれない資料を入手した。 それが冒頭の音声だ。問題の夜からしばらくして、Aさんの知人男性がBさんに事情を聞いたときに録音されたものだという。
「一番近いところにいたBちゃんに、客観的にいろんなことを全部、聞いてみたいと思って」 「そうですね、はい」 そんなやり取りから始まる録音の中で、Bさんとされる女性の声は時折笑いも交え、落ち着いて聞こえた。 後編記事『【音声入手】伊東純也「性加害騒動」…女性が事件後に語っていた「衝撃の内容」』へ続く。
「週刊現代」2024年2月24日・3月2日合併号より
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