ウクライナ侵攻 日本への避難者 自立の思い支える環境を(2024年2月28日『毎日新聞』-「社説」)

日本財団の報道機関向け説明会で、思いを語るウクライナからの避難者(中央の2人)=東京都港区で2024年2月21日午後1時27分、北村和巳撮影拡大
日本財団の報道機関向け説明会で、思いを語るウクライナからの避難者(中央の2人)=東京都港区で2024年2月21日午後1時27分、北村和巳撮影

 戦火の終息が見通せず、避難生活は長期化している。ニーズに応える支援が大切だ。

 ロシアの侵攻を受けたウクライナから、日本にはこれまで2594人が逃れてきた。約2年となる今月20日時点で、2099人が暮らしている。

 政府は、早期に支援の枠組みを整えた。自治体や民間の団体によるサポートもあった。

 昨年12月には、紛争から逃れた人々を、難民に準じた立場として受け入れる「補完的保護」の制度が始まった。

 対象者と認められれば、原則として「定住者」の在留資格を得られる。既に、ウクライナからの避難者が認定された例がある。

 支援に取り組む日本財団が定期的に実施しているアンケートからは、避難者が直面している課題が浮かぶ。

ウクライナからの避難者たちが参加して開かれたクリスマスパーティー=西東京市で2022年12月24日午後1時57分、北村和巳撮影拡大
ウクライナからの避難者たちが参加して開かれたクリスマスパーティー西東京市で2022年12月24日午後1時57分、北村和巳撮影

 昨年11~12月の調査では、39%が「できるだけ長く日本に滞在したい」と答えた。1年前は25%であり、定住を望む人が増加した。

 そのためには日本語の習得が欠かせない。避難当初に比べれば、一定程度は話せたり理解できたりする人が増えたが、いまだに3割余が「ほとんど話ができず、聞き取れない」と回答している。

 国や自治体は、学ぶ機会をさらに充実させる必要がある。

 働いていない人が5割を超えているのも懸念される。生活の糧がなければ、自立して安定した暮らしは送れない。

 仕事先を探しても、言葉が壁になるケースが目立つ。専門知識を持つ人も少なくないが、生かせる職場が見つからないという。一人一人に合った仕事の紹介や職業訓練の体制を拡充すべきだ。

 親を母国に残してきた人が多い。将来への不安も強く、精神的なサポートが不可欠である。

 ともに避難してきた子どもたちの教育や進学にも、きめ細かな目配りが求められる。

 こうした支援の必要性は、ウクライナに限ったものではない。アフガニスタンミャンマーなどの人たちにも適用できる仕組みを、つくらなければならない。

 ウクライナからの受け入れを機に外国人支援の機運が広がった。安心して日本で暮らせる環境の整備を進めたい。