(2024年2月27日『しんぶん赤旗』-「主張」)

「私的」との言い訳通用しない
 靖国神社の社殿に大勢の制服姿の自衛隊員らが整列し一斉に頭を下げている―。同神社の社報「靖国」昨年7月号に載った写真です。防衛省は、同年5月に遠洋練習航海に参加する海自初級幹部らが靖国神社(東京都千代田区)を集団参拝していたことを本紙に認めました(20日付)。同省は、研修の休憩時間に隊員個々人の自由意思で行った私的参拝だとしていますが、憲法政教分離原則に違反する組織的参拝であることは明白です。

事実上、強制の可能性
 本紙は17日付で社報を示し、海自幹部らの集団参拝を報じました。社報は写真を付けて「五月十七日、海上自衛隊遠洋練習航海部隊の指揮を執る練習艦隊司令官・今野泰樹(やすしげ)海将補以下、一般幹部候補生課程を修了した初級幹部等一六五名が、航海に先立ち正式参拝した」と記しています。靖国神社のホームページによると、「正式参拝」とは本殿での参拝を指し、玉串料を納める必要があります。

 さらに社報は、遠洋練習航海について「昭和三十二年以降毎年実施され、今回で六十七回目となる。出発前には当神社へ正式参拝に訪れている」とし、参拝が慣例化していることも示唆しています。

 実際、本紙が同神社の社報を1998年から調べたところ、コロナ流行期の2020~22年を除き、毎年、海自幹部らの集団参拝の記事が掲載されていました(26日付)。「先輩諸英霊の冥福と遠洋航海の安全を祈念」(98年)とか、日本の侵略戦争を美化する展示施設「遊就館」を拝観(16年など)と書かれたものもありました。

 昨年の遠洋練習航海は海自の報道発表によると、同年5月25日~10月20日まで、今野海将補を指揮官に一般幹部候補生課程を修了した初級幹部約160人が実習目的で参加するとしていました。

 防衛省は今回の参拝を「実習幹部等が歴史学習のため九段下周辺にある史跡等を巡る研修」を行った際、「休憩時間を利用し、個人の自由意思により参拝した」としています。しかし、165人もの隊員らが整然と集団参拝していることからすれば、部隊として計画していたことは明らかです。しかも、遠洋練習航海に参加する初級幹部約160人のほぼ全員が参拝していたのは確実で、事実上の強制とみられてもおかしくありません。

 自衛隊員の宗教活動に関する事務次官通達は、宗教施設への部隊参拝と隊員の参加強制を禁じています。防衛省は「誤解を招く行動は避けなければならない」としており、今回の参拝はこれに抵触します。酒井良海上幕僚長は「問題視しておらず、調査する方針はない」(20日の記者会見)と述べたとされますが、もってのほかです。

徹底調査しやめさせよ
 靖国神社は戦前・戦中、天皇のために戦死した兵士を「英霊」として祭り、国民を侵略戦争に動員する精神的支柱でした。戦後も侵略戦争を「正義の戦い」と宣伝する中心的役割を果たしています。

 1月には陸上自衛隊ナンバー2の陸上幕僚副長ら「航空事故調査委員会」メンバーによる集団参拝が明らかになったばかりです。

 自衛隊内での組織的参拝は、旧軍との連続性をうかがわせ、侵略戦争を美化する同神社の歴史観の肯定にもつながります。防衛省は徹底調査し、こうした参拝をきっぱりやめさせるべきです。