猛暑のせい?「危険木」急増で都会のオアシス、等々力渓谷が立ち入り禁止に 再開まで数年かかる理由(2024年2月18日『東京新聞』)とは

 東京23区唯一の渓谷として知られる東京都世田谷区の等々力(とどろき)渓谷が、一部をのぞき立ち入り禁止になっている。倒木が発生し、区の調査で緊急伐採などが必要な「危険木」が50本以上も見つかったため。急傾斜地で重機が入れず作業は簡単ではなく、再び市民に開放されるまで数年はかかる見通しだ。(奥野斐)

 等々力渓谷 武蔵野台地の南端を谷沢川が浸食してできた、延長約1キロメートルの渓谷。世田谷区のパンフレットによると、1974(昭和49)年に区立公園として開園し、区域を広げ3ヘクタール超になった。谷沢川の下流部には日本庭園や等々力不動尊があり、現在も利用可能。99年には一帯が都の「名勝」に指定された。

◆数十万人が訪れる遊歩道に倒木、調査で計52本も…

フェンスでふさがれた等々力渓谷の入り口=東京都世田谷区で(奥野斐撮影)

フェンスでふさがれた等々力渓谷の入り口=東京都世田谷区で(奥野斐撮影)

 「危険 通行止め」―。東急大井町線等々力駅すぐの「等々力渓谷公園」の遊歩道入り口に張り紙がされていた。フェンスが立てられ、長さ約700メートルの遊歩道が立ち入り禁止になった。
 谷沢川沿いの渓谷は、ケヤキシラカシなどの樹木が茂り、都会とは思えない景色が人気だった。区によると、散策などで年間数十万人が訪れていたが、昨年7月6日、清掃中の区民が高さ約20メートルのシラカシの木が遊歩道に向かって倒れているのを発見した。
2023年7月の倒木でふさがれた等々力渓谷の遊歩道=世田谷区提供

2023年7月の倒木でふさがれた等々力渓谷の遊歩道=世田谷区提供

 区は翌7日から立ち入りを禁止して昨年11月までに公園内の樹木調査をした。708本のうち、伐採や剪定(せんてい)の緊急対応が必要な危険木が52本あることが判明した。さらに、経過観察を要する木も45本あった。

◆重機が入れず、伐採も運び出しも人の手で

 だが、遊歩道が狭く重機が入れないため伐採はすぐにはできない。現在、新年度からの作業開始を目指して計画を詰めているところだが、公園緑地課の岸本隆課長は「伐採した木材は、さらに切って人の手で運ぶ必要がある。作業が終わるまでに数年はかかる」と説明する。
 区はこれまでも樹木医による樹木調査を行い、老木を定期的に取り除いてきた。急に危険木が増えた理由については、近年の猛暑で樹勢が弱まっていたところに、病虫害が予想以上に進行したためだと指摘する声があり、対策に頭を悩ませている。
 フェンスの張り紙を見ていた近所の男性会社員(43)は「観光客もたくさん来ていたし、地元では通勤通学で通る人もいた。なんとか早く通れるようにならないものか」と嘆いた。岸本課長は「作業が終わったエリアから再開することも検討したい。安全を確保した上で、少しでも早く再開できれば」と話した。

https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/012/015/001/010/d00004247_d/img/012.jpg