ケア担う子の進路支援 18歳以降も切れ目なく(2024年2月26日『沖縄タイムス』-「社説」)

 「ヤングケアラー」に関する自治体の相談窓口に、国が4月以降、進学や就職の専門支援員を配置する方針という。


 大人に代わって家族の世話や家事を担うヤングケアラーを巡っては、大学生や高校生も必要な支援が受けられるように、との声が強い。ヤングケアラーは18歳未満とする定義が多いためで、18歳や20歳といった年齢で区切らず、継続して支える仕組みづくりが急務だ。

 厚生労働省が2020、21年度に実施した調査によると、大学生の6・2%(約16人に1人)、高校生の4・1%(約24人に1人)が「世話をしている家族がいる」と答えている。

 家庭内のデリケートな問題で表面化しづらいが、決して少なくない数字だ。

 調査からは、大学生ケアラーの13・6%が「希望する就職先・進路の変更を考えざるを得ない」、高校生ケアラーの13・0%が「宿題をする時間や勉強をする時間が取れない」と回答している。過度な負担が学業や進路、就職活動に影響を及ぼしていることがうかがえる。

 世話との両立や経済面の不安から進学をためらったり、転勤があるため好きな仕事に就けないなど思い悩んでいるのだという。

 こども家庭庁は、ヤングケアラーに関する相談窓口の設置を自治体に促しており、新年度からその窓口に進路支援の専門員を置く事業を始める。

 18歳以降の支援についても社会全体で問題意識を共有したい。   

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 ヤングケアラーは早期発見が鍵とされ、国は22年度から3年間を集中取組期間とし啓発活動に力を入れる。

 今月、閣議決定した少子化対策関連法案には、ヤングケアラー支援を初めて法制化する内容も盛り込まれた。

 家事や家族の世話は子どもの期間だけでなく、大人になっても続くため、法制化は18歳未満を所管する児童福祉法ではなく、子ども・若者育成支援推進法で規定。

 国や自治体の支援対象と明確に位置付けることで、対応の地域格差解消につなげるとともに、切れ目のない支援を目指していく。

 18歳で対象外となる公的支援は多く、その弱さは子どもの貧困対策などでもたびたび指摘されている。

 子どもから若者、大人へと見守りをつなげていく、支援の拡充が求められる。

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 沖縄県が22年に実施した調査で、ヤングケアラーと思われる小中高生は全体の5・5%だった。

 進路希望を聞くとケアを担っている中高生は「高校まで」とする割合が高く、「大学・大学院まで」の割合が低いという結果になった。

 置かれている状況、不利の積み重ねが、進路選択に影響していると推測される。

 ヤングケアラー支援は緒に就いたばかりである。

 法制化は問題に取り組む決意と受け止めるが、一方で「介護の社会化」抜きに解決できない問題であることも忘れてはならない。