教員の心の病 実効性ある働き方改革を(2024年2月26日『中国新聞』-「社説」)

 心の病で長期間の休みを取る教員が増えている。子どもの学ぶ環境を揺るがしかねない状況といえよう。

 文部科学省の調査によると、2022年度に公立小中高校と特別支援学校で精神疾患を理由に休職した教員は6539人。2年連続で過去最多だった。精神疾患で1カ月以上の休暇を取った人を含めると1万2192人に上る。

 個々の要因はさまざまだろう。背景には、業務量の増加に伴う長時間労働の常態化がある。文科省や各地の教育委員会はこれまで教員の働き方改革を進めてきたが、十分な成果が上がっているとはいえない。より踏み込んだ負担軽減策が急がれる。

 学校現場では、1970年代の第2次ベビーブーム期の子どものために大量採用された世代が定年退職のピークを迎えている。ベテランが一気に抜け、もともと採用が控えめだった中堅層の負担が増し、若手が悩みを相談できずに孤立する―。そんな構図が浮かぶ。

 休職と病気休暇の割合を年代別で見ると、20代が最も高かった。教員採用試験の志願者数が過去最低を更新し続けている世代である。せっかく正規採用されても、すぐに職場を離れる人が多いようでは、教員不足がますます進みかねない。

 実際に、病気などによる欠員を穴埋めできないケースが後を絶たない。広島県内の小中高校、特別支援学校では広島市を除く市町で昨年9月1日に38人、広島市内でも昨年末時点で9人の欠員が生じていた。教頭や主幹教諭が授業や学級担任を受け持つなどして、しのいでいるという。

 しかし、それでは周りの教員に負荷がかかる。病休が病休を呼ぶ事態もあると聞く。授業が遅れたり、クラス運営が行き届かなかったり、子どもたちにしわ寄せがないとは言い切れまい。といって、産休や病休を取りにくくなっては本末転倒である。

 問題解決には、長時間労働の是正が不可欠だ。文科省は、学校での出退勤時間の管理や外部人材、情報通信技術(ICT)の導入などを進めてきた。時間外労働は一定に減ったが、解消には程遠い。