AMラジオが「廃止」か?(2024年2月25日『しんぶん赤旗』-「潮流」)

 人々の暮らしに溶け込むAMラジオが「廃止」されるかもしれません。民放各社は、「経営安定」を理由に44社をAM放送からFM放送へ転換する計画です

▼実施は「2028年秋をめど」。放送を休止(停波)して影響を検証する「実証実験」を2月1日から来年1月31日までの間、13社、34局で予定されています

▼業界団体の日本民間放送連盟(民放連)研究所の「2024年度のテレビ、ラジオ営業収入見通し」によると23年度は、ラジオの営業収入は1・7%減の見込み。地上波98社の24年度はAMが含まれる「中波・短波」で0・9%減と予測しています

▼停波が可能になったのは、放送免許を出す総務省による「特例措置」です。同省ホームページによると、20年12月に「民間ラジオ放送事業者のAM放送のFM放送への転換等に関する『実証実験』の考え方」を公表。この中で「AM転換は各社の経営判断により行われるもの」という方針を示していて国は支援しません

放送作家の石井彰さんは、「災害時、電池で長時間受信できるラジオは情報の命綱」と指摘します。「AM波を放送局の事情だけで止めて、FM波に転換するのはあまりに乱暴です。AM波が停波になって初めて、自分のラジオではAM波に代わるワイドFMが受信できないことに気づく人が多数発生するでしょう。広くきちんと知らせるべきです」

▼AMラジオの電波の「到達範囲」はFMよりも広い。利点を棚上げして「情報弱者」を増やすことが懸念されます。