困難女性の支援 官民協働で幅広く、息長く(2024年2月25日『信濃毎日新聞』-「社説」)

 人権の尊重を柱に、厳しい状況にあるすべての女性を視野に計画を練り上げてほしい。

 県がドメスティックバイオレンス(DV)や性被害、貧困などに苦しむ女性への支援策を盛った基本計画の素案をまとめた。

 2028年度までの5年間に、情報発信の強化や相談方法の多元化、一時保護機能の多様化などを進める内容。この春施行される「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」で、都道府県に計画の策定が義務づけられている。

 女性相談のニーズは高い。22年度に県女性相談センターに寄せられた相談は、2千件近くに達した。職場や地域での人間関係が最多の29%を占める。次いで夫などに関するものが27%で、このうち4割がDVだ。

 このほか、県内10カ所の県保健福祉事務所と19市の女性相談員も相談を受け付けている。22年度は6500件を超えた。

 相談を寄せる年代は、30~40代が半数近くを占める。気になるのは10代以下がわずか1・2%であること。電話相談と面接が主流のため、電話に抵抗があったりそもそも電話番号を知らなかったりすると、窓口にたどり着けない。

 SNSの活用に力を入れたい。困ったときにSOSを発しやすく、小さな声でも届く仕組みを工夫してほしい。

 虐待やいじめで居場所をなくす中高生たち、10代に広がる市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)、生活困窮、予期せぬ妊娠…。若年の女性が抱える生きづらさは多様で、複雑さを増している。

 行政の支援だけでは限界があるが、民間との連携は立ち遅れている。県内に民間のシェルターは乏しく、県とNPO法人などとの協働も行われていない。

 民間団体の掘り起こしが基本計画に盛り込まれた。市町村とのネットワークも強めて、協働の土壌を耕す5年間としたい。

 もう一つ、大事な問題がある。県と市の女性相談員は計37人。一部に保健や福祉の専門職が正規で配置されているものの、多くは非正規の会計年度任用職員だ。

 基本計画には援助の必要な人のもとへ出向くアウトリーチが盛り込まれている。アフターケアを含む伴走支援の強化も鍵になる。その主な担い手は相談員だ。

 過酷な状況に置かれた女性を、最前線で支える側の雇用が不安定では、支援の継続性に疑問符がつく。相談員が知識と経験を積むためにも、雇用の安定を図らなくてはならない。