内閣官房機密費(2024年2月22日『しんぶん赤旗』-「主張」)

闇金にさせないルール作りを

 自民党の裏金づくりに国民の怒りが高まるさなか、松野博一官房長官が、昨年12月14日に事実上更迭されるまでの2週間で、内閣官房機密費(報償費)4660万円を自身に支出していたことが発覚しました(本紙11日付既報)。

疑惑から逃げ回る人物が

 官房機密費を何に使ったか、会計検査院ですら領収書の提出を求めることができません。まさに使途不明の“闇金”です。

 政府は、「取扱責任者である内閣官房長官の判断で支払いが行われるとともに、その使用は内閣官房長官という政治家による優れて政治的な判断の下で決定される」としています。つまり官房機密費が適正に使われているのか担保するのは官房長官です。

 松野氏は自民党安倍派(清和政策研究会)の「5人衆」の一人で、政治資金パーティーをめぐり、2018年からの5年間で1051万円を政治資金収支報告書に記載せず、東京地検特捜部の事情聴取を受けています。国民への説明から逃げ回り、弁明したものの派閥に責任転嫁するものでした。こうした人物が官房機密費の適正な使用を管理できるのか。不適格なのはいうまでもありません。

 にもかかわらず、多額の官房機密費を持ち出せることは官房機密費の制度的欠陥を示しています。

 2018年1月に最高裁は、官房機密費の支出関連文書の一部開示を国に命じました。判決後、原告の上脇博之・神戸学院大学教授ら「政治資金オンブズマン」は菅義偉官房長官(当時)に要求書を送っています。官房機密費を国会議員、ジャーナリスト、公務員に渡すことを禁じることや、一定の期間が過ぎた支出について情報公開を求める内容です。官房機密費が政策買収や世論誘導など民主主義をゆがめるものに使われないための最低限のルールです。

 しかし、当時の菅氏から現在の林芳正氏まで歴代4人の官房長官がこの要求書に耳を傾けた形跡はありません。闇金化させないルールづくりすら拒みながら、「厳正で効果的な執行を行っている」(林官房長官)と言われても、信用できるものではありません。

 「赤旗」の特報を受け林官房長官は、松野氏の4660万円の持ち逃げを「他の月や前年度の支出と比べても大きく異なるものではない」と述べました。テレビでは、ある政治評論家が「通常の支出」などとコメントしました。

 これらの発言は官房機密費そもそもの性格を無視しています。官房機密費は「官房長官のその都度の判断で機動的に使用する」ものです。国民の税金が原資でありながら、支出先や内容を明らかにできない公金だからこそ、その使用はあくまで例外的、機動的なものに限られます。それを、まるで恒常的に使われて当たり前のように言うのは感覚のマヒでしかありません。国民がチェックできない使途秘匿金の垂れ流しを軽視することは許されません。

便利なつかみ金許さない

 2012年12月に第2次安倍晋三内閣が発足して以降、歴代の内閣は、年間12億3021万円の官房機密費を11年度連続でほぼ使い切ってきました。「機動的」に支出するべき公金が、内閣の便利なつかみ金になっていないか。公表することや党派的・私的流用を許さないルールづくりが急務です。