日弁連初女性会長(2024年2月23日『しんぶん赤旗』-「主張)

第1回 渕上玲子さん(LESSON2) 教えて先輩!ワタシらしい ...

渕上玲子氏

 

法曹界男女共同参画の風を

 日本弁護士連合会(日弁連)の会長に、75年の歴史で初めて女性が選ばれました。20日の同会の選挙管理委員会で、渕上玲子氏が次期会長に正式に決まりました。裁判所、検察庁を含めた法曹三者で女性がトップに立つのは初めてであり、画期的です。

選択的夫婦別姓を公約

 日弁連には全国すべての弁護士(約4万6千人)が加入し、会長は会員による選挙で選ばれます。日弁連の会長選への女性の立候補自体も初めてでした。同会は、基本的人権を擁護し社会正義を実現するという弁護士の使命を果たすために、国家機関から監督を受けない独自の自治権をもちます。意思決定や、会を代表して対外活動を行う会長の役割は重要です。

 渕上氏はこれまで、東京弁護士会初の女性会長や日弁連副会長、同会事務総長を務めてきました。東京弁護士会の会長時代を振り返って、初の女性会長ということで、後に続く後輩のために、どういう会長であるべきかを常に意識してきたと語っています。今回の会長選への立候補も、日弁連における男女共同参画を実現する一歩と位置付けていました。

 選挙公約の主な柱に「市民の人権を守る」ことを掲げ、両性の平等、性的指向や多文化、多様な価値観の違いを認め合う社会の実現、選択的夫婦別姓制度の実現をあげています。会長として、公約実現に向けた活動が期待されます。

 日弁連の創設直後の1950年、女性弁護士の割合は0・1%でした。2001年に初めて10%を超え、現在は20%です。徐々に増えてきたとはいえ、まだまだ少ないといえます。

 同会は、司法における意思決定の場に女性を増やすことを目指し、02年の総会で男女共同参画を実現するための積極的改善措置(ポジティブ・アクション)に取り組むと宣言、07年に男女共同参画推進本部を設けました。推進基本計画を作り、重点項目として、体制の整備、女性弁護士の割合の拡大などに取り組むとしています。

 その一つとして18年度から導入されたのが「女性副会長クオータ制」です。副会長を15人とし、うち2人以上を女性にしなければならないというものです。21年度からは、女性理事クオータ制も実施されています。こうした取り組みが、初の女性会長誕生につながったといえるでしょう。

 司法界全体でも、全国の裁判官(簡易裁判所判事を除く)のうち女性の割合は29%(23年)で、現在、最高裁の判事15人中、女性は3人、2割です。検察官のうち女性の割合は27%(同年)と少数です。

女性が救済求めやすく

 司法の場に女性が増えることは、国民の半数を占める女性にとってプラスです。弁護士に女性が増えれば、性暴力やDV(配偶者、恋人などからの暴力)の被害女性が法の救済を求めやすくなるでしょう。日本には、中絶すると女性だけが罰せられる刑法の堕胎罪や、中絶に配偶者の同意を必要とする母体保護法など女性差別的な法律が残っています。選択的夫婦別姓同性婚も認められていません。司法の判断は、そうした法律の改正の後押しになりえます。

 日弁連初の女性会長誕生が、日本の遅れたジェンダー状況の改善につながるよう、大いに新しい風を吹かせてほしいと思います。