裏金の弁明を「非公開」にするなんて…自民は「1人1時間」を主張、しかも「人数制限」疑惑まで(2024年2月23日『東京新聞』)

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に関し、衆院政治倫理審査会(政倫審)への出席を申し出たのは安倍派、二階派の幹部5人だけだった。本人が望めば、公開の場で疑惑を払拭することができるのに、自民は非公開での実施を主張。5人以外にも自ら弁明する意向を示す議員がいるにもかかわらず、自民は対象者を限定して早々に幕引きを図ろうとしている。(大野暢子、井上峻輔)

◆「公開の場で説明したい」と語る自民議員も

 自民が5人以外は政倫審出席の意思を示さなかったと野党側に報告したことに関し、立憲民主党笠浩史国対委員長代理は22日、記者団に「全員が同じ回答だなんて甚だ疑問だ。本当にきちんと調査したのか」と憤りを隠せなかった。
報道陣の質問に答える岸田首相=22日、官邸で

報道陣の質問に答える岸田首相=22日、官邸で

 実際、安倍派最高顧問だった衛藤征士郎・元衆院副議長が本紙などに「公開の場で説明したい」と明言。ベテランの衛藤氏だけでなく、中堅・若手の複数の議員が出席に前向きな意向を打ち明けているという。

◆恐れているのは「内輪もめ」か?

 それでも、自民が出席させることに慎重なのはなぜか。逃げ腰の党幹部の対応に不満を抱く議員から、裏金づくりの経緯を暴露されたり、派閥幹部や党の責任を追及されたりする可能性を危惧(きぐ)しているためだ。
 安倍派議員の一人は「党幹部に出席の意向を伝えたら『出席には申し出書が必要だ』などと言われた。これ以上、出席者を増やしたくないのだと分かった」と明かす。
 疑惑を持たれた議員が国民の政治不信を解消するには、公開の場で事実を明らかにするのが得策だが、どうして非公開での開催にこだわるのか。5人は「政倫審が原則非公開」であることを理由に挙げているとするだけで、自民から明確な説明はない。
 政倫審は18年前の2006年2月に、耐震強度偽装事件に絡んで、自民党の伊藤公介元国土庁長官に対する審査を実施した。当時は伊藤氏の申し出で行われ、テレビ中継されたという前例もあり、公開することは難しくない。

◆身内からも「隠したままでは納得を得られない」

 また、自民は1人1時間に限るよう要求する。冒頭に本人の弁明が15分から20分あるとすれば、与野党の質疑は短時間となり、組織的な裏金づくりが誰の指示で始まったのかなど核心部分に迫る前に時間切れとなりかねない。
 裏金事件を巡り、世論の批判と政治不信が高まる中、岸田文雄首相は国会で「自ら説明責任を果たすよう促す」と繰り返してきた。わずか5人の弁明で区切りを付けようとする姿勢からは、実態解明に指導力を発揮しているとは言い難い。
 自民の中堅議員は「今秋に総裁選を控え、党内有力者の恨みを買いたい人はいない。党執行部も強く出席を要請できないのだろう」と指摘。5人が非公開での実施を求めている点については「内容を隠したままでは、とても国民の納得は得られない」と話した。